愛する事はとても簡単で。
なのに、愛される事はとても難しい。
振り返ると、愛し愛されている恋人達が目に入る。
中途半端に伸びた髪、茶色に染めた髪の根元が黒くなっている。ウィンドーに写った自分の姿が中途半端な今の自分と同じに見える。
社会から、学校からはみ出そうとしても勇気の出ない自分はタバコを吸うくらいの反抗しか出来ない。
生きる事に意義が必要だった。
そんな時、ふとテレビ中継されているテニスの試合が目に入った。
詳しいテニスのルールも、対戦している学校もそんなものは一切目に入らなかった。
ただ、貴方へと真っ直ぐに引き寄せられる。確かなる恋愛という名の引力
だから、その日から貴方を手に入れることが私の生きる意義となった。
愛される有意義
「弦一郎さん。帰りましょう」
「ああ、帰るか」にそう言うと柔らかく微笑んで。
「はい」
そう言って俺の少し後ろを歩いて付いてくる。
長く真っ直ぐな黒髪。今時の化粧など一切していない清潔そうなピンクの唇。色白の肌はとても柔らかそうで、最近一緒に居るとある欲望を擡げそうになる自分に気付いて
だめだ、俺たちはまだ中学生なのだから。中学生らしい付き合いをせねばとそう思いなおす。
コイツ、と付き合いだして半年。
最初、女子との付き合いなどたるんどると常々言っていた俺がどうしてと付き合いだすことになったのかと言うと。
部活動の帰りに、ふとみると道端にうずくまる人影。
黒くまっすぐな黒髪に、白いワンピースを着て華奢な足首を押さえて、うずくまる少女に普段の己ならしない行動を取って。
「大丈夫ですか?」
そう声を掛けていた。
不安そうに見上げるその瞳に魅せられた俺は、らしくもなく肩を貸し初対面のその少女を比較的近い実家に招いて手当てまでしていた。
聞くと、そんなに離れていない場所にあるマンションに自ら進んで送っていく事にしていた。
両親も彼女を気に入ったようで、しきりに”彼女”なのかと聞いてくるが。
無論そんな訳も無いので、違うとそう言う度に彼女が悲しそうな瞳をするので自惚れかもしれないが彼女が自分を憎からず思っているのでは無いかとそう思った。
とはいえ、自分が今最優先すべきはテニスの事だったのであえてその感情を見ないようにしていた。
部活帰りに何度か偶然に会って話すうちに自然と、親しくなっていつしか自分の中に生まれた感情を切り捨てくる事が出来なかった。
少しはにかんだ笑顔で。
「弦一郎さん」
そう呼ばれるたびに、耳にひびく甘い声を聞くたびに体中が彼女に占領されていきそうでおかしくなっていく。
だから、俺は。
「すまない。さん貴方とはもう会えない」
何故と、大きな瞳でポロポロ涙を零す彼女を瞬間抱きしめたいと思ったその時点で引き返す事はもう無理だったのかもしれない。
泣きながらそれでも了承の返事をくれた貴方に、胸が掻き毟られるような感覚を覚えた。愛しさでおかしくなりそうだった。
彼女に会えなくなって、1週間たってそれから意外な場所でさん貴方と再会した。
季節外れの転校生として俺の前へと現れたのだった。
それも奇遇な事に同じクラスへと編入してきたのだった。
大きく見開かれたその瞳があまりに綺麗で、見惚れてしまう。
「ごめんなさい。弦一郎さん黙っていて」
半ば強引に引きずって行って事情を聞きだすと、少し前から立海への編入は決まっていたらしい。それの下見をかねてこちらへよく遊びに来ていたときに俺と知り合ったらしい。
「何故言わなかった?」
「驚かそうと思ったの……。だってそのときは喜んでくれると思っていたから、で、でも弦一朗さんに悪いからもう一度お父様に言って元の学校へ戻し・・」
の言葉はそれ以上は続かなかった。何故なら俺が、愛しく思う気持ちを抑えきれずにを抱きしめたからだ。
最初は中をかいていたの腕が、ゆっくりと俺の背に回った時に耐え切れずに俺は唇を奪っていた。
それから、俺たちは付き合い始めた。
男女交際なぞたるんどる。そう自分でも思っていたが、周囲の反応は最初は激しく驚かれたが、を紹介すると納得したのか羨ましがられる事こそあっても苦情を言われる事は無かった。
だが、最近悩みがある。
と付き合い始めて、6ヶ月――日一日と愛しく思うその気持ちは膨らんで側に居ると思うさま触れ合いたいとそう思うようになってしまった。
の甘い唇を一度味わってしまってからは・・・・・破廉恥と分かっていても、だんだん己を抑えきれなくなってしまう。
そんな自分に気付いて最近はを遠ざけがちだった。
そんなある日の事だった。
2週間ぶりくらいに、と一緒に帰る帰り道。
突然の通り雨に二人とも、傘を持ち合わせてなくてびしょ濡れになりながら帰り道を急いだ。
「弦一郎さん。良ければ家に寄って下さい。タオルもありますし、傘もお貸ししますので」
「え?あっああ、そうだな」
学校から歩いて5分にあるのマンションに、寄る事になった。
二人ともびしょ濡れだったので、とりあえずシャワーに入ることになった。
濡れた服は乾燥機で乾かす事になって、当然の様に奥ゆかしいは先に俺にシャワーを勧めてきた。
だが、白い肌が青くなって小刻みに震えているを見ているとかわいそうで仕方が無くて。
「俺は、後からでいいから先に入って来い」
「え?で、でも」
「いいから、そんな紫色の唇をしていて風邪でも引いたら大変だ」
「…はい。では、お先に失礼します」
そう言ってバスルームに消えたを見て何処かホっとした。
雨に濡れた風情が、何処か艶かしく見えて落ち着かない気分になっていたのだ。
あわてて、シャワーを浴びたのかバスローブ姿のが5分足らずで出てきた。
まだ、髪も乾かしていないのかポタポタと雫が零れ落ちている。
無言で近寄りバスタオルを奪い取り、ゴシゴシとの頭を拭いてやる。
「え?弦一郎さん…じ、自分で出来ますから・・・」
「そんないかにも慌てて、出て来ましたって風情で見過ごすことなど出来るわけなかろう?お前は常々自分を蔑ろにしすぎる・・・こんな時くらいゆっくり湯にでも浸かってこい」
「でも、弦一郎さんも濡れてますから・・・…。大切なお体ですから、風邪でも召されると大変ですから」
ためらいがちに返される答えは、こんな時にでも俺を思いやる言葉で……。
愛しさで胸が苦しくなるっていうのはこういう事なのかと思う。ふと目線をにむけると先程まで、紫色に近かった唇が上気してピンク色になっているのが目に入る。
バスローブの合わせ目から覗く肌も白い肌がピンク色に上気している。
そして、湯上りのシャンプーだか石鹸だかの匂いが漂い。
今まで見ないようにしてきた感情が一気に噴出してくる。
抱きたい。一つになりたい。大切なお前だから、尚更手に入れたくて堪らなくなる。
動きの止まった俺をいぶかしんで、普段は節目勝ちでまっすぐに俺を見ることの無い黒曜石の綺麗な瞳で俺を見上げる。
その眼差しの綺麗さと、少し開いたままになっている唇の隙間からのぞくピンク色の可愛い舌に煽られ俺はとうとう禁を破った。
いきなり襲い掛かって来た俺を押しのける事も無く、その行為すら享受するお前。
問答無用の口付けにも、ぎこちないながらも答えてくれる。
そしてバスローブの合わせ目から、柔らかな胸の膨らみを弄っても耳まで真っ赤になりながらも抗議の声が上がる事は無かった。
柔らかすぎるその胸の感触に、あまりに頼りない感覚の中胸の頂である乳首を軽くすりあげると。
「・・・はぁん・・・」
小さな嬌声であったが、溜まらない声をあげてがよがる。
立ったままの行為で、が俺にすがりついてくるのを確認して膝裏をすくい上げ抱き上げ何度か訪問して勝手知ったる他人の家をの自室へと向かった。
抱き上げたその体のあまりの軽さに少々感動しながら目をやると。てっきり目を伏せていると思っていたがこちらを見て。
「弦一郎さん。大好き」
と微笑みながらそう言ってくれた。
「不埒な俺でも構わないのか?」
「あら、責任とって下さるんでしょう?なら、は永遠に弦一郎さんのものですからお好きになさってくださってくださいな」
当然と付き合いだした時点で、今後のことは考えていた。
「当然だ」
「なら、何も問題ございませんわ」
そういうと、頬に口付けをくれた。
ああ、本来なら新婚初夜の閨の中でする行為であるはずなのに・・・。
の部屋のベットに到着し優しく横たえる。
「幸せにする」
「なら、弦一郎さんは私が幸せにして差し上げます」
軽口を叩く事で俺の罪悪感を薄めてくれているのが、分かる。何故ならお前の指先がこれから始まる事の恐怖でカタカタと震えているのを俺は見てしまったから。
バスローブを解いて、その痩身を露にすると狂おしいほどにかき乱される。
「明かりを消してください」
初めての行為にお前の小さな願い。このままその体を隅々まで見ていたいとそう思えるが、怯えを必死で押し殺しているを見るとそんな瑣末な欲望などどうでも良くなってくる。
俺自身も衣服を脱ぎ捨てて、夕方の薄闇の中遥に圧し掛かった。
先程から、ピンク色の胸の飾りが俺を誘ってやまない。
その舌触りを確かめるように、ベロリと舐め上げるとそれだけの衝撃での体が震える。その反応が微笑ましく思えて、口元に笑みが出る。
遠慮も無く口に含んで転がすと、それが芯をもって硬くしこる。開いた左手で、左の乳房を軽く揉み上げると。
押さえ切れなかったのか、がたまらない声を上げる。
「…んっ…はあっん…」
その声にますます、煽られて触れてさえいない己が熱く立ち上がるのが分かる。
女を抱くのは初めてだが、漏れ聞いた話や仁王に無理矢理見せられたビデオでこの先の行為は知っている。
体をの体の間に割り込ませ、太股を割り開き躊躇せずにそのピンク色に光花弁を舐め上げる。
「ヤ…は、ずかしぃ……」
「その割には、どんどん奥から溢れてくるぞ」
俺のその言葉に、ピンク色に染まっていた遥の顔に更に朱に染まる。耳まで赤くするお前が愛しい。
溢れてくるその奥に誘われるように指を這わす。
クチュリ
重たい水音が響き、指1本は簡単にその奥に飲み込まれていった。
暖かく煽動するその肉壁にその中に包まれる時の事を想像すると喉が鳴る。
「も、はずかしぃから…。来て」
その言葉に誘われて、俺は初めてのはずのを気遣う余裕もなくその熱いその場所に突き入れ一つになった。
「…ぁん・・・いぃ…」
テニス部で鍛え上げられたその体は本当に見事で、その体力そのままで揺さぶられて慣れていないと正直それ自体苦痛になるはずだが私にとっては快楽にしか結びつかない。
繋がった場所からは、ひっきりなしに蜜が溢れてきっとシーツにまで滴っている。
きっと経験者だったら私の体の反応でバレでいると思うが、生真面目な彼がきっと未経験だろうとは思っていたけど実際にこうやって交わるまで確証は持てなかった。
初めての体験に我を忘れているその様子で確信する。
―――――騙しおおせていると。
真田弦一郎出合った時は、立海大付属の1年生エースだった。
暇つぶしに覗き込んだ街頭のテレビで偶然見たテニスの試合。
テニスの事も何も分からずにただその視線の強さとその潔いまでのその姿勢に惚れた。
でも、その時の自分では彼を振り向かせる事は難しいと何となく分かっていた。
真っ黒な髪と、強いその目線。
少し調べれば彼のことは分かった。堅苦しいほどに融通が利かない性格と、古風な言葉遣い。
こうして彼の周りを嗅ぎまわっていると、程なくしてある人物に呼び出された。
「どうして、真田の回りを嗅ぎまわっているのか教えてくれるかな?」
「…流石、幸村君ね。正直に話せば協力してくれる?」
食えない笑みを浮かべる彼を、敵に回すよりは取り込む事にしてその場を切り抜けた。
真田弦一郎を手に入れる為なら、努力を惜しまなかった。
出合った時の自分は、きっと彼が一番嫌いなタイプ。中途半端に染めた髪、だらしのない言葉遣い。
耳にはたくさんのピアス。処女なんてとっくの昔に失ってしまっていた。
ロクロク勉強などしたことが無かったのを、2年かけて立海に編入出来る学力を見につけた。
お金だけは沢山くれる親は、人に自慢できる学校に通いたいと言えば一人暮らしでも何でも許可してくれた。
だから、私は頑張った。
貴方を手に入れることが私の生きる意味だったから。
体の奥に何よりも確かな、愛される証を感じる。
一杯一杯私を欲しがって、愛してくれるなら一生騙してあげる。
ああ、なんて気持ちいい。
声を上げて、その名前を呼ぶと返される微笑み。
これこそが――――愛される有意義。
と、言う事で「DARIA」様との相互記念SSで色葉様のリクで真田裏夢を頑張って見ました。
2005.10.20UP