守ってあげたい〜君が消えた後で〜芳崎健司25歳B型おとめ座の呟き
12月23日のあの日の、別れ話は正直本気じゃなかった。
ファイクにしては悪質な嘘をついたと自覚はある。だが、どうしてもの気持ちを確かめずには居られなかった。
20歳で大学で出会った。眩しいくらいにキラキラした彼女を、何とか射止めて付き合い始めたけど。
サバサバして、明るくて申し分の無い彼女。
回りに自慢できる理想の彼女。
不満は無いはずなのに、なんだが一つも現実味が無いと気付いたのはいつだろう?
あれは、いつだったかお互いが就職してしばらく会えなくて突然の残業に約束をドタキャンした事があった。
「え?ああ、そうなんだ。なら、丁度いいわね。ミサエに飲み会誘われてたんだ。だからそっちに出るからいいよ」
正直文句の一つも言われる事を覚悟していただけに、殊更明るく言われて拍子抜けした。
「そうか…。ならいい」
鈍いと言われる俺も、同じようなやり取りを3度も繰り返すうちに。
自分はそれほど求められていないのではないかと思うようになっていた。
実際には後から、それはお前の強がりだって言う事が分かったのだが…。
その頃はそんなの気持ちになど気付かずに、不信感を募られるばかりだった。
だから、一世一代の覚悟で
「好きな人が出来た。一人では何も出来ないような、儚げな人で俺が一緒にいて
側に居ないと何も出来ないような頼りない人なんだ。だからすまないが、別れてくれ…。」
そう言っていた。
愚かだと笑ってくれていい。
好きな人も、守ってあげたい人も目の前のお前だけなのになのに、お前に愛されている実感が欲しいんだ。
だから、泣いてくれていい詰ってくれていい俺に本当のお前を見せてくれ。
黙ったままのお前に、適当な嘘を並べ立てていると。
やっと口を開いたお前は。
「ふーん。そうなんだ。分かった、いいよ。別れてあげる、もしかしたらそんな気してたんだ。
あ、この後約束あるからもう帰るね。じゅあね、元気で」
と一気にまくし立てて、その場を逃げるように去っていった。
嘘だろ?
呆然とその後姿を見送るしかなかった俺は、そのとき自分のした過ちに気がついた。
素直じゃなくて、意地っ張りで、愛して欲しくてもそう言えないお前だった。
見間違えじゃなかったら、涙が滲んでいたと思う。
1分ほど固まった後、レジに適当にお金を叩きつけてその後を追ったけど。お前は捕まらなかった。
マンションにも行ってみたけどその明かりは消えたままで、取り返しのつかない過ちを冒したままマンジリとせずに夜を明かした。
翌朝、の部屋に行くが何度チャイムを鳴らしても不在で。その日は3度ほどマンションを尋ねても不在で、携帯や友達に連絡してもその居場所は要としてしれなかった。
が居なくなって1週間、大家さんに言ってその部屋に上げてもらったけど。
さっきまで誰かが寝ていたようなベットの膨らみがあるけれと、その膨らみの後には1冊のマンガがあるだけだった。
その後、日記を発見して本当のお前の気持ちを知った。
愚かな俺は、お前の手を離してしまった。なぁお前は今何処に居る?