守ってあげたい 番外 真夜中のお宅訪問
週末の土曜日の夜11時、突然インターフォンが鳴り響いた。
お風呂に入って、翌日が日曜日だということで晩酌をしてほろ酔い気分になっていた。
深夜の来客に不審に思いながらもインターフォンの受話器を上げる。
「はい」
「あっ、オレオレ岳人。面白いもん持って来たから遊ぼうぜ〜」
「え?って今何時だか分かって言ってるの?」
「分かってるって11時だろ?とりあえず、開けろよ」
「うん」
これが尋ねて来たのが、跡部や忍足なら絶対に鍵を開けるはずもないのだが相手が岳人だったのと酔いが回ってきていて、何の警戒心も無く鍵を開けた。
エントラスの施錠を解いて、程なくチャイムが鳴る。
「はい、はい」
ガチャリと扉を開けた先に、氷帝テニス部の面々を発見して咄嗟に閉めようとしたが、いつぞやのように扉が閉まりきる前に差し込まれた足に阻まれた。
これはどうしても開けないと収まりがつかないと観念して、開けてみると前回と同じく跡部の麗しいおみ足をおもいっきり挟んでいたらしい。
「痛てぇ」
「ごめんなさい。……というか、何でこんな時間にあんた達来るのよ」
「はいはい。とりあえず中入れてぇな」
私の質問には答えずに、勝手に中に入ってしまった。
前回の早朝訪問と同じメンバーでプラス樺地で、跡部、忍足、鳳、宍戸、芥川、向日がドヤドヤと入ってきた。ちなみに、寝ている芥川を樺地が担いできていた。
芥川を下ろすと、樺地は一礼して早々に去って行った。
ドカっとソファの一番いい位置に腰掛けた跡部、意識があるのか無いのか微妙な感じの芥川は居心地のいいラグの上に移動していた。
おのおのソファなり地べたに勝手に座っている。
「で?何で来たって聞く権利はあると思うんだけど」
「俺は無理やり連れられてきた」
と宍戸。
「ふぅん。言い出しっぺは誰?」
そう聞くと、向日が元気に挙手してくれた。
「提案したのは俺。だって、跡部と忍足が険悪ムードになってたからさぁ。そんなら皆で一緒に祝ってあげれば?って言ってみた」
「祝う?」
祝うと言われても全然ピンと来ない。
「あー。忘れとるみたいやな」
「コイツらしいというか、なんと言うか……。もう少しで日付が変わる。明日は何の日だ?」
と呆れ顔の忍足と跡部。そこまで言われてやっと気がついた。
「もしかしなくても、私の誕生日?」
こちらをニッコリと微笑んで見ている鳳に問いかけると、笑って肯定されてしまった。
20歳を過ぎた頃から、自分の誕生日を意識しないようにしてきたのでその習性で自分の誕生日の事なんかスッパリサッパリ忘れていた。
「でも、普通この時間に家来たりしないでしょ?お父さんも居るし」
「編集長が今日から出張なのは調査済みだ」
とあっさり跡部にいなされてしまった。
跡部のその言葉を聞いて、あれお父さん編集長に出世してる。
しかも、今日から出張なのかーと思ってしまったのはかなり娘として失格かもしれない。
「でも、調査って」
「跡部は今日いう日におもいっきり気合入っとたからなぁ。まぁ、その辺は許したって」
何だか釈然としないけど、忍足にそう言われて言おうとした文句を引っ込めた。
祝おうとしてくれる気持ち自体は嬉しいと思えるから……。
「ということで、パーティをするぞ」
「はぁ?」
夜中の11時に何を言い出すんだとそう思ったけど。
跡部が携帯を取り出して何処かへ電話をすると、5分もしない間にインターフォンが鳴り勝手に応対に出た向日が鍵を開けて、何処かのホテルのケータリングのオードブルその他の料理が運び込まれてきた。
「おおっ、美味そう」
料理のにおいに誘われたのか、今までラグで寝ていた芥川も起きだしてきた。
呆然としていると、手にシャンパングラスを持たされてシャンパンゴールドの液体を注がれる。
もうこうなったらヤケだと思い。グラスを一気すると、周囲から「おおっー」と何故か喜ばれてしまった。
誕生パーティという名の宴会が始まって30〜40分くらいした時に、いきなりライトが落とされてお誕生ケーキが登場した。
灯された蝋燭の明かりにすぐ誕生ケーキだということが分かって、その何処か幻想的な光景を見ていると。
跡部がリードボーカルで、皆がお誕生の歌をフルバージョンで歌ってくれた。
どっか照れくさくて、でもとても嬉しかった。
歌い終わると同時に、ふぅーと蝋燭を吹き消すとパっと灯りがついてその後に皆がプレゼントをくれた。
跡部からは、ブランド物のブレスレット。
忍足からは、綺麗なブルーのピアス。
鳳からは、薄いピンク色の石がついたネックレス。
芥川からは、羊のクッション。
向日からは、バランスボール
宍戸からは、繊細な造りのバレッタを貰った。
嫌々連れて来られたらしい、宍戸からもプレゼントを貰って何だか悪い気分になってしまう。
「ごめんね。何だか悪いね」
「う、あー夜遅く来るのが嫌なだけで……。お前の事がキライな訳じゃねぇ」
思わず謝ってしまうと、宍戸が小声でそう言ってくれてとても嬉しかった。
「俺らのプレゼントについてはコメントは、無いんかいな?」
「ありがとう。とても嬉しい。大切にするね」
今の気持ちを正直に伝えて、満面の笑みでそう言うと皆笑ってくれていた。
そこからは、大宴会に突入してしまった。
密かに酒好きだとバレてしるらしくて、オードブルと一緒に大量に持ち込まれたお酒をニコニコしながら飲んでしまった。
「はぁ〜。結構酒好きやなぁ?」
「えー。うん、お酒好きだねぇ。というか皆来る前にも飲んでたし」
「もしかせんでも、ザル?」
「でもないよ、やっぱり限界はあるから。そういう皆はどうなの?」
「俺と跡部は、結構強い方やなぁ。宍戸はそこそこで、鳳と岳人とジローは弱いんちゃうか」
そう言われて、弱いと言われた3人を見ると既に潰れている芥川とハイテンションの向日と目が据わりきっている鳳が居て、なるほどと思ってしまった。
「というか、よく私の誕生日知ってたね。そんな話誰にもしたこと無かったと思うけど」
「入学の書類だ」
そう端的に言われて、そう言えばそんな事もあったようなと思い出すくらい前の事である意味感心してしまった。
「覚えていたのは誰?」
「俺だ」
と何故か自信満々の跡部。
「と俺もやで」
すかさず、忍足が自分も覚えていたとアピール。
「それで、二人で揉めた訳ですか……。」
はぁっと思わずため息が漏れる。祝ってくれるのはとても嬉しいのだ。
私に好意を抱いているらしい二人。
だけど、正直どちらとも恋愛をするつもりの無い私には少々二人の好意は重すぎる。
「そんな辛気臭い顔せんと、とりあえず飲もうや」
「そうね」
色々考えるのも面倒なので、言われたとおりグラスを重ねる。
それからどれくらいの時間がたっただろうか、起きているのは私と忍足と跡部だけになっていた。
流石の私も、酔いに瞳が潤んだ来た。
そんな時に忍足がこんな事を言ってきた。
「なぁ、ずっと気になっとったんやけど。ノーブラ?」
「えっ。あ……。そんな訳ないじゃん」
寝るつもりだったので、大きめのTシャツに短パンの姿で当然ブラジャーはしていない。
色の濃いTシャツだったので多分バレないだろうとタカをくくっていた。
「へぇ。そうなんかなぁ、ならそれ何や?」
そう言われて、胸元を見ると摩擦で擦れたせいか胸の飾りがぷっくりと主張していた。
「あはははは」
笑って誤魔化して、前かがみになっていると左隣に居た忍足に突然胸を触られる。
「やっ」
「ああ、やっぱりノーブラやん」
しかも、ゆっくりと揉まれてしまう。
突然の事に跡部に救いを求めると、何処か欲情した風情のその表情を見て心臓がドキリと跳ねる。
「忍足。俺にも確かめさせろ」
跡部はそう言って、右隣から右胸を揉み始める。
普段の二人なら、こんな風に馴れ合う事なんてありえないだろうけど。
「もしかして、二人とも酔ってる?」
「ああ、に酔ってるぜ」
「俺もや」
二人仲良くズレた答えを返してくれる。
絶対二人とも酔ってるよ。涙目になってやめさそうとするけれど、男二人に適うわけもなくって本当赤子の手を捻るって感じで、必死の抵抗もいなされてしまう。
両方の乳房を違うリズムで揉みしだから、時折指の間で乳首を挟み込むように揉まれてしまうと。
「んっ……」
鼻から抜けるような、甘い声が出てしまう。
その声を聞いて、二人とも余計にヒートアップしたのか服の上からでもしっかり分かるようになった胸の飾りをその服の上から舐め濡らし始める。
直接的な刺激じゃない分もどかしくて、必死で声をかみ殺す。服の上から歯で甘噛みされて思わず腰が跳ねる。
その刺激に、下半身に熱が灯りそうになって必死で気を散らそうとするけれど胸だけじゃなく敏感な首筋をぺろりと舐められてしまって。
「あっ…ん」
と決定的な嬌声を上げてしまった。明るいリビングで、目の届く場所で寝ている向日達の姿が目に入り尚更羞恥で死にそうになってしまう。
抵抗も忘れて、両手で口を覆うとTシャツのすそをたくし上げられてしまって恥ずかしいくらいに、ピンと立ち上がっている胸の飾りがあらわになってしまう。
あまりの恥ずかしさにぎゅっと目を瞑って、次の刺激を待つけれどいつまでたっても訪れない刺激に両脇を見ると、なんと二人とも寝てしまっていた。
ホっとする気持ちと何だか残念なような気持ちとで、複雑な心境になりながら二人の周りを見るとブランデーやらウイスキーやらの瓶がゴロゴロしていた。
どうやら、お互いがお互いをつぶそうとして二人が共倒れになったというところが真相らしい。
何だか腹がたって、ぽかりと二人を叩くと。
揃いも揃って。
「…。」
と寝言を言う。どうやら二人ともに夢の中でも愛されているのは確実のようだった。
しょうがないなぁと思いつつ。
眠る二人の頬に、キスを贈り。
その後に皆に毛布をかけて回って自分も就寝することにする。
胸の部分が湿ったTシャツを着替えながら、どんな答えにしろちゃんと答えを出さなきゃとそう思った。
愛されするぎるのも辛いわ。
と世の女性が聞いたら殺されそうな独り言を心の中でつぶやきながらは眠りについた。
2005.02.12UP