「子守唄を歌ってくれないか?」
と、神は気怠げに、しかしその立場故の気品を落とすことなく優雅な雰囲気を湛えながら宣った。ので、僕は天使らしく、慈悲深い微笑みを浮かべたまま「死ね」とだけ言って矢を放った。
しかし、そのまま天上まで連れて行くのまでが天使である自分役目だと思っていたのだが、どうにも彼は未だこの世界に未練があるらしく旅立とうとはしない。全く、この不景気に僕の仕事を更に減らそうとするなんて酷い上司であることこの上ない。
「何なら、冥府の王とでも縁を結んで差し上げましょうか?」
「遠慮しとくよ。まだルーベンスの絵を見てないしね」
僕の心からの提案にも応じることはなく、彼はからからと笑ってみせた。その余裕が不満で「じゃあ僕が代わりに死にますよ」と告げると「こっちに来てまで過労死かい?」なんて呑気な言葉を返してくる。僕が死んだら忙殺で後追いさせられる職員がどれだけいると考えているんだろう……否、何も考えていないのだ。きっと、彼は。
「で、子守唄はまだかい?」
どうせ働かせてない頭なら永遠に眠らせておけばいいのに、と思ったのでついうっかり手元にあった法律書の類を一つずつ投げてみた。何だか鈍い音と、耳障りな声がしたが「ちょっと前衛音楽ですみません」、とか言っとけばまあ納得してくれるだろう。周りの人が。
後書き
眠れなかったので天使君に子守歌を歌って貰ったらどうなるか考えてみた。
歌ってすらもらえなかった。
10/08/24
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