超合理的自浄的隠蔽方法
「ちゃんと仕事してくれませんか」
「僕は仕事をしない、という仕事をしているんだがね」
なんて巫山戯たことを宣う上司の後ろ姿を見て、私は溜め息を吐きました。これがかつて自らの父親が犯した公害事件の惨劇を、驚くべき手腕と手法で闇へと葬った人なのだとは到底思えません。ただ、私の溜め息を気にかけることもなく、オフィスの椅子を揺らしながら唄を口ずさむその姿には、少しばかり指導者の風格が漂っているように感じました。
彼は謡います。朗々と、種族の掟に従って愛した人を殺した異形の唄を。
「少しばかり面白い噺とは思わないかね?」
「何がですか」
突如唄を止め、そう問うて来た彼の輝かんばかりの笑顔は、長年の経験によると大抵よろしくないことがこれから起こることを暗示していました。
「いくらいつまでも共に居るために己を偽ろうとも。法律に従って殺し合う定めは変えられない、強大な力に抗えないと考えると、我々も生きていく自信を喪失していかないか?」
「何を馬鹿なことを。我々より強大な力を持つ生き物がいるとお思いで?」
「馬鹿は君だ。ヒトの敵が生き物だけだと考えるなよ」
そう言って上司は手にしたステッキでコンコン、と地面を叩きました。
嗚呼、やはり、よろしくないことが起こりそうです。
「いつか、天罰が下りますよ?」
「何を言ってるんだ?君もさっき言ってたじゃないか。僕らより上に君臨するモノなんているものか」
そう言ってからからと笑う姿は子どもその物の無邪気さで、私はまたひとつ溜め息を吐きました。
まあ、だからこそあの事件を葬り去ることが出来たのでしょうが。
後書き
そのうちかきなおします。
11/01/05
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