水
いっそ歪んでいたならば、
あいつを受け止めることが出来たのに。
いっそ違っていたならば、
それらしく生きることが出来たのに。
歪まず、違わずにいる自分自身を、
愛することなど出来ぬというのに。
愛されることを望む自分は、
この世で一番不誠実なのだろう。
誰よりも中庸でありたいことを欲している内に、
誰よりも異端となっていく。
底の無い水受け皿であるならば、
孤独にゴミ箱の中生きればいいものの、
それを知りながら、
未だに注がれる水を待ち望んでいる。
待ち望んで、
待ち望んで、
待ち望んでいるだけで。
嘲笑う他の皿をひっくり返し、
同情する他の皿から水を貰い、
溜まらぬ水を溜めようとする。
逃げなのか、
飽くなき心なのか、
それすらも最早わからない。
ただ言えるのは、
自分が欲するのは「水」そのものだけなのだろう。
それだけである。
後書き
水。無色透明。無いと死ぬ。
09/09/14
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