ひらり、舞い落ちる木の葉を手のひらで受け止めるように。
生と死の狭間、無理矢理ヒトを繋ぎ留めることが「職業」となるならば。
木の枝から葉をもぎ、手の中で愛でることもまた「職業」と言えるのではないのかな?
眼前にいる中年の男性は表情を変えることなくそう言った。
その目はどこまでも真摯で、揺らぐことのない意思を感じさせる。
そして……そのことが俺を恐怖させた。
「そんなことは…………」
ない。
その2文字がとっさに紡げない。
それは奴の強固な意思が、真摯な眼差しが理由ではない。
否定、しきれないのだ。
「なに、気に病む必要はないさ」
男がまた言の葉を紡ぎはじめる。
「突き詰めれば、君も私たちと同じ人種。同族を嫌悪しつつも、否定も出来ない」
まるで、俺の心中を読むかのように、奴は続ける。
「だからこそ、君は私たちと行動を共にするべきなんだ」
「…………」
「迷ってるのか?怖いのか?……恐れる必要などない。私たちはこの病院という場では満たすことの出来ない、君の内なる願望を満たすことが出来る。私たち、なら」
共に、同じ世界で生きよう……と延べられた手を拒むことは簡単だ。
だが……それを出来ない自分がいた。
そこには、確かに、俺の願望を叶えるという魅力があった。
非人道的だと罵られようが、あるまじき行為だと詰られようが構いやしない。
俺は、その手をとった。
そこには、確かに俺を必要とする人がいるから。
後書き
自分に迷いがある人っておいしいと思います。
で、道踏み外しちゃって戻れなくなって後悔しちゃうといいと思います。
09/09/20
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