後発シンクロニシティ




 僕は生まれた。


 はじめに見えたのは、白い壁。

 微かに感じたのは、誰かの温もり。


 その瞬間まで、ずっと待ち望まれ、やっと生まれた僕を包むはずの、喜びの声、表情は無かった。


 周囲の目線は、もう僕に注がれてはいなかった。


 僕の、すぐ後に生まれた、僕と殆ど同じ何かが、目線の先にいた。




 それから十数年もの間、ずっと同じで、僕に注がれるモノは何かと少ない。

 僕と、殆ど同じ奴が、殆ど同じことをするからだ。


 オリジナルは僕なのに、親も誰もがそれを忘れ、まとめて僕らを褒め称える。


「さすが双子ね」
「タイミングもいっしょ」


 違う、一緒じゃない。

 あいつはいつだって、生まれたときから、全部後出しだ。
 僕がやっていることを、真似してるだけなんだ。
 だから、褒めるのは、僕だけでいい。


 母親は笑って返した。


「また、同じこと言ってる」




 殺すしか、ないと思った。

 自分が1人として、扱ってもらうために、殺さなければいけないと思った。


 右手にホームセンターで買って来た包丁を持ち、左手で部屋のドアを開ける。

 部屋を出て右手に曲がり、弟の部屋へと向かう廊下に出る。
 そこで、右手に包丁を持った弟に会った。



「「何をする気だ」」


 そんな白々しい科白を、同時に吐いた。


 そして、あいつはぼそぼそと、言う。


「両親は自分を満足に褒め称えてはくれない」


「自分の方が後から生まれたから、自分の方が若い内に、早い段階でひらがなを覚えたりしてるはずなのに」


「だから、殺そうと思った」



 ああ、なんだ。

 こいつも、同じ気持ちだったのか。


 僕の独白も終わり、僕らは笑い出す。

 からからと、何て馬鹿らしいんだと、同時に笑う。



 そして「真似するなよ」と互いの左胸を突き刺すまでも同時だった。




後書き
何となく病んでる話が書きたかった。
双子ってロマンだと思います。実際自分が双子じゃないから言えるんでしょうけど。
09/12/19

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