0-6
今日は朝からなんだか変だった。
起きたばっかりなのに起きた気がしないと言うか…
十分に寝た気はするんだ。
でも…眠い。
今日は休日で。
健の誘いで朝から健の家に来ている。
特にこれといってすることもないけれど。
ただなんとなく、テレビを見たり。
喋り続けたり。
お互いを呼ぶ時は苗字ではなくて、名前だった。
何故か聞いてみたけど、「いいじゃん、たまには。」なんて言われた。
後から思い返してみたら、なんだか少しだけ健が甘えてきて、たくさん触れ合っていたような気がする。
時計を見て、そわそわもしていたっけ。
早めの夕飯を食べ終わって。
日ももう少しで沈みきりそうだった。
いきなり電気を消されて。
何事かと思ったら、健がケーキを持って現れた。
それには、火の灯ったロウソクが挿されていた。
「Happy birthday!!」
そういえば俺、今日誕生日だったと思い出して。
健が祝ってくれて、嬉しくて。
お決まりの歌を歌ってくれた後にロウソクを消して。
「おめでとう、奏!」と言われて。
「ありがとう、健。」と言った。
そして、キスした。
ちょうど二人分位の大きさのケーキだったから、健と俺だけで全部平らげた。
キスをすると、「甘いね。」って言われて。
同じ言葉を返してやった。
そしたら、
「奏の身体はもっと甘いんだよ。知ってた?」
なんて言い出したから、思わず足が出てしまった。
どこに当たったかは知らないけど、結構効いたみたいで健はうずくまっている。
今の内にと逃げるように立ち上がり歩き出した。
でもすぐに包み込まれて。
「ひどいなぁ奏。結構痛かったんだよ?」
なんて。多分、嘘。
「お前が変なこと言うからだろ。」
これは本当。反射的に出てしまったんだ。
「本当のこと言っただけなのになぁ~」
「………変態。」
「そんな僕も好きなんだろう?」
いや、別にそんな健が好きって訳ではないけど。
…いや、好きなのかな?
つい無言になってしまった。
「奏、好きだよ。」
不意に耳元で囁くから、少しだけ、肩が跳ねてしまう。
「大好き。」
幸せで。
俺も健が好きだと、伝えた。
突然身体の力が抜けて。
健が支えてくれたから良かったものの、さすがに…驚いた。
「…大丈夫?」
健が、暗い顔でそう言うから、俺は笑顔で返した。
明るい顔にはなれなかったかもしれない。
「なんだか眠いんだ。」
朝から、ずっと。醒めることなく。
健と居たいから必死に我慢していたけど。
そろそろ、限界かもしれない…
「…しばらく、寝ているといいよ。」
ベッドに連れられて、横になる。
「ごめん、健。」
謝ったら、何故か笑顔を向けられた。
「気にしな~い。ほら、奏の寝顔を見ていられるしね。」
また、キス。
甘く、長いキス。
髪を撫でられながら、だんだんと遠のいていく意識。
「奏」
遠くから、健の声が聞こえる。
「おやすみ。」
うん。
おや す み 健