親の反対で私達、別れたけど、本当にそれで良かったの?
それは許されない関係だった。
今は夢見るだけ。
腕をつかまれて、「なぜ、別れるのか?」と問い詰められた時、
私はすごい形相で嘘をついた。
「あなたの家の財産に惹かれただけ。もう疲れたから解放してちょうだい」と。
性悪女に騙されたと思って、そのまま放っといてくれれば良かったのに。
シリウス・ブラック――彼は持っていた魔法の杖を壁に投げつけ、立ち去ろうとした私を壁に叩き付けて
押し戻した。
「嘘ばかりつくな、お前の本心なんて見えてる!」と激しくののしって。
ホグワーツのクリスマスパーティで、秘密を囁き交わして笑いあったのが始まり。
それからは言葉を交わさなくても、ただ仲の良い友達のようにじゃれあうだけで幸せだった。
羽ペンで、宿題を教えあう振りをしながら互いの羊皮紙にラブレターめいた
言葉を書き込んだり、ロンドンのカフェで互いのグラスから飲みかけのアイスコーヒーを飲んだり
やりたいことは何でもやった。
帰省日、「実家に帰りたくない」と彼が言うと、迷わず、ロンドンのアパートに泊めてあげた。
彼の親には「友達の家で泊まる」と欺いて。
そんな日々があっけなく終わったのは、彼の両親が私達の関係に感づいて「ニューヨークに住む私の家族を脅迫した」からよ。
悔しくて、泣いて、泣いて、関係を解消することを承知したのは昨日のことのよう。
「もう会っていませんから、家族を脅迫するのはやめて下さい」と
その日、私はホテルのカフェでブラック夫人に頭を下げて頼み込んだ。
「まだ疑ってらっしゃるのなら、私の後を一日中つければいいです」と
念には念をいれて。
「おい、、開けてくれ!」
困ったなぁ。今日もシリウスがアパートに押しかけてきた。
「開けられないの、帰って!」
「嫌いだから、帰って!」
「俺の親に何か言われたんだろう!?何を言われたんだ?」
「何も言われてない!帰って!」
翌朝、夜明け前の薄闇の中で、ふっと目覚めた時、は無意識にグレーの
シーツを探った。
そこにシリウス・ブラックはいない。
そして、側には彼への想いをつづった羊皮紙の束がくしゃくしゃに丸められて
フローリングの冷たい床に投げ捨てられていた。