ハリーがパーティ会場から姿を消したを探していると、思わぬ人物の声に突き当たった。
その人物は空き教室で声を落とし、何か重大なことを密談しているらしかった。ハリーは透明マントを被り、ぴたりとドアに耳をつけた。
「ミスは許されないぞ。ドラコ」
「何のことだ?」
「君が我輩に本音で話してくれているのならいいのだがね・・なにしろあれは粗い手口だった。
そのおかげで、君が事件に関わっていたことを奴らが嗅ぎつけたのだ」
「誰が嗅ぎつけたと言うんだ?」
マルフォイは固く腕を組み、怒ったように言った。
「分からんのか?君のお父上を捕らえた厄介なKCC(フェリシティー伯母の所属するスパイ組織)の連中だ。あの連中の一人が、我輩のところに
事件のネックレスをよこせとせまってきたのだ」
「何だって?KCCの連中がお前のところに来たのか?」
マルフォイの声が上ずった。手は振るえ、目はしみた。
「だけど、僕はあの事件に関しては無関係だ・・くそっ!ケイティ・ベルの奴・・誰も知らない敵が
いるに違いない」
しばらくして、心臓が喉元に飛び上がりそうな恐怖をやっとのことでおさえつけた
マルフォイは途切れ途切れにスネイプに反駁した。
スネイプは負けじと疑念の目つきでマルフォイを睨んだ。
「いいか?お前に言っておくが僕を疑ったって無駄さ。それにお前が今、何をしようとしているか掴んでいる。だけど、
僕の真意を引き出そうとしても効かないぞ。お前の開心術は通用しない」
マルフォイは彼の目つきが気に入らなかったらしく、すかさず有利な立場からもう一撃加えた。
「なるほど・・・べラトリックス伯母さんが君に閉心術を教えているのか。
ところで、ドラコ、君は自分の主君に対してどのような本心を隠そうとしてるのかね?」
スネイプは間をおいてから、静かに言った。
「ふざけたことを言うな!恐れ多くも僕があの人に本心を隠す?僕が不愉快なのはお前の
そういうデカイ態度が嫌なんだ!」
マルフォイは床を踏み鳴らし、威厳を見せ付けるかのように怒鳴り散らした。
「頼むから僕の仕事の邪魔をしないでくれ・・あの人から与えられた役目だ。
それに計略がある。きっと上手くいく」
「どのような計略だね?」
「邪魔をするなと言っただろ!!」
マルフォイは大声でわめいた。
「我輩は君を助けようとしているのだ。君を護ってくれと母上に頼まれた。
破れぬ誓いをしたのだ」
スネイプは心配そうに眉根を寄せて言った。
「母上・・余計なことを!」
マルフォイはちっと舌打ちした。
「それよりお前はどうなんだ?僕のことばかり監視して自分の仕事はどうしたんだ?
べラトリックス伯母さんがイライラしていたぞ。いつになったらフェリシティーとかいう
スパイを始末するのかと」
「しかも、そいつはKCCのメンバーで、あの・の伯母だってね。父上を殺そうとした吸血鬼の
女とも親しかったとか。べラトリックス伯母さんが全部教えてくれたよ」
マルフォイは、スネイプの顔が怒りに引きつるのを楽しそうに眺めながら言った。
「今はまだ時期ではないのだ。彼女を殺せば、真っ先にダンブルドアが我輩を疑うだろう。それに、君はまだ分からんようだな?そのスパイの女がネックレス事件
の黒幕を君だと睨んでいるんだぞ」
「お前、そいつにネックレスを渡したのか?」
「敵に我輩が君を引き渡すような真似をすると思うか?もちろん否だ。
だが、あの女とKCCの連中は情報網を駆使して、君だという情報を掴んだらしい。ダンブルドアがそう話してくれた。
つまり、お前は今下手に動くとあの女に捕まるだけだ」
「我輩に任せろ。必ず君の任務が上手くいくように手助けしてやる」
「フン、KCCの連中が何だ。父上を捕まえたぐらいでいい気になるなよ。
どっちにしろ、連中は絶対にあの人にかなうものか。ほうっておけばいい」
「そのような過信が君の浅はかさだというのだ。連中を舐めるな。
君も父親の二の舞になりたいのか?」
「うるさい!お前の狙いは何か分かってるぞ。僕の仕事を横取りして名声を得たいんだろう?」
全てを残らず聞いてしまったハリーは透明マントを巻きつけたまま、へなへなと近くの壁にもたれかかった。
スネイプはやはり前から睨んでいたとおり、黒だったのだ。ハーマイオニー、はまんまと騙されている。
それと、の伯母に関係のあるKCCとは何のことなんだろう?
スネイプがの伯母の命を狙っている?
だとすれば、病院で彼女を暗殺しようとしたのはスネイプなのか?
彼はその場にうずくまって、忙しく考えをめぐらしていた。