翌日、ディアヌ・クラウン・レコード店に吸血鬼が現れたという事件が日刊預言者新聞

に載り、世間はこの猟奇的事件にヴォルデモートのことなど頭から

吹っ飛ぶほどおそれおののいた。

ここ三週間の間に容疑のかかった、及び、ハリー・ポッター、フェリシティー・

ホラス・スラグホーン、セブルス・スネイプ、ハーマイオニー・グレンジャーら事件直前まで

彼女と接触した者は全て呼び出され、魔法警察の厳しい尋問を受けた。

だが、徹底的に調べた魔法警察の徴収でも彼女を犯人だと特定できる証拠は何も出ず、

彼らはしぶしぶながらを白と見極め、彼女への捜査を打ち切った。

フレデリック・ロクスリーの両親は自宅にまで詰めかけた記者団に対して、そのたびに

不運な息子の首の傷跡を見せ、犯人不明という事実への憤懣やるかたない気持ちをぶつけるのだった。



「フレデリックったら何で、あんな変なこと言ったのかしら?吸血鬼が出た時間、私、髪を直しに洗面所にいたのよ!

 血を吸われた時、恐怖の余り、幻覚でも見たのかもね」


「もう、ロクスリーの話はやめろよ。僕はあいつがセドリックにそっくりだってことだけでも、嫌なことばかり思い出して

 参ってるのに・・」


魔法警察のやっかいな事情徴収が終わってしまうと、すっかりクリスマス休暇に入っていた。

、ハリーはウィーズリー家の暖かい台所で、芽キャベツの皮を剥いているところだった。


「ルーピンはまだ来てないよな?」

一緒に芽キャベツを剥いていたロンが、ハリーに不安そうに囁いた。

「到着は夜だろ。大丈夫、まだ影すらも見えないさ」

ハリーはくるりと台所を見渡して言った。

「そうか、よかった・・さっきの君たちの会話、ルーピンが聞いたら狂うぜ」

ロンは不器用な手つきでナイフを動かしながら言った。




その頃、イギリスのの屋敷に滞在していたフェリシティーとルーピンは軽い運動と称して、よく整えられた美しい庭で

護身術の練習を行っていた。

「新しい武器が届いたって、本当か?」フェリシティーの突きをなんとか交わしながらルーピンはたずねた。

「そうよ。45口径の銃。KCC(フェリシティーの所属する魔法界のスパイ組織)のメンバーがこの間、アメリカに行って

 買ってきてくれたの。護身用に新しいのを持ってろって」

「ああ、ディアヌ・レコードのキムさんか!」

「そうか・・あの人も君と同じKCCの優秀なメンバーだったよね。マグル出身で得意分野は射撃だったっけ?」

「そう、でも、私は体術のほうが得意だからついつい、杖や銃を使うのを忘れちゃうのよね」


そう言って、彼女は素早く足を高くかかげルーピンにストレートな蹴りをお見舞いした。


「ちょっと、リーマス・ルーピン!一つお聞きしたいんだけど今まで喧嘩の一つもしたことないの?」

「残念ながらない。シリウスは君の弟さんとしょっちゅうやってたけど」

「これぐらいよけられなきゃデス・イーターの呪詛が飛んできた時、どうやってよけるの?今のは一応、手加減して蹴ったんですからね」



フェリシティーは先が思いやられるといわんばかりに、数メートル後ろに景気よく吹っ飛んだルーピンを

助け起こしながら言った。


「ああ・・痛いな。この蹴りを前回の魔法省襲撃時、ルックウッドとマクネアがもろに食らったんだろう?

 お気の毒様。」ルーピンはしかめっつらしながら、蹴られた箇所をさすりながら立ち上がった。


「だって、あいつがミナの首を絞めようとしたから、ついカッとなってやりすぎちゃったのよ」フェリシティーはしぶしぶながら反論した。

「杖も持てないほどうちのめしたってことだろう?」

ルーピンはそう言うと可笑しそうに笑った。


「ダンブルドアは頼もしいスパイを人選したな。そこらへんの男より

 君に信頼を置いてるって私に言ってらしたぞ!」


「ありがとう。だけど、(もう一人のスパイの)セブルス・スネイプを信頼してるのは納得が行かないわね」フェリシティーはさっと赤毛の前髪を振ると、しかめっつらをした。



護身術でひとしきり汗をかいて、午睡すると、両者はコートに身を包み

ウィーズリー一家に行く途中、市場に立ち寄って野菜、果物を買った。


二人とも、すれ違う通行人たちがすぐに見てとれる違いにきづかなかった。


フェリシティーは大変気かざっていて、一目で華やかな魅惑的な大富豪の婦人だと

察することが出来たが、ルーピンは狼人間のスパイに出ていて、誰とも会わないせいか

ちょっと着古した服装をしていた。




「こんばんは、モリー!」

「来るのを待ってたのよ、フェリシティー!」


午後八時、赤いスマートなスポーツカーを降りて、フェリシティーとルーピンはウィーズリー家の

玄関に立った。


モリーはフェリシティーの豪華な服装には及ばないが、こざっぱりとした身なりで彼女を向かえ、両者は抱き合って互いの頬にキスした。


「それにリーマス、寒かったでしょう?夕食が出来てるわ。さ、入って、子供達があなたを待ってるわ」


その言葉どおり、モリーの上手にさばいたローストチキン、エンダイブのシチュー、フェリシティー、ルーピンお手製の

ココアクリームでコーティングし、粉砂糖をちりばめた薪型ケーキの夕食を、お腹をすかせた大勢の客たちが平らげ、

隠れ家はなごやかな雰囲気に包まれた。









































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