翌日のハロウィン・パーティは誰もがそわそわして落ち着きのないように感じられた。
生徒ら、各校の校長らは豪華な食事に目もくれず、いまかいまかとダンブルドアの方を期待と不安を込めた眼差しでみていた。
「さて、ゴブレットは代表選手を決定したようじゃ。名前を呼ばれた者は、大広間の一番前にくるがよい。
そして、教職員テーブルに沿って進み、隣りの部屋に入るよう――――そこで最初の指示を与える。」
ご馳走を盛り付けた金の皿はあっという間に空になり、ダンブルドアは杖を一振りし、大広間の照明をほとんど真っ暗にした。
(くりぬきカボチャの明りは煌々と灯っていたが)
純金の炎のゴブレットは大広間の中でやたらきらきらと輝き、青白い炎がボウッと縁から上がった。
生徒ら、各校の校長、ゲストとして来ているルード・バグマン、ミスター・クラウチはごくりと息を呑んだ。
「ダームストラングの代表選手は」
炎のゴブレットが広間の全員に聞こえる様に大声で叫んだ。
「うっそう、しゃべれるんだ!」
リー・ジョーダンが小声でハリーに言った。
「ビクト――ル・クラム!!」
「ばんざーーい!!」
ロンが声を張り上げた。
大広間のあちこちから拍手がわいた。たちまち彼は教職員席の後ろの扉へと歩いていった。
「ボーバートンの代表選手は」
拍手が完全に鳴り止むのを待って、ゴブレットがしゃべった。
「フラー・デラクール!!」
「ロン、あの人だよ!」
ハリーがこづいた。
ヴィーラ美少女は優雅に立ち上がり、クラムと同じように教職員席の後ろの扉へと歩いていった。
一瞬の沈黙、そして――――
「ホグワーツの代表選手は」
ゴブレットが真っ赤に燃えた。
「セドリック・ディゴリ――!!」
ハッフルパフ生が総立ちになり、狂ったように拍手を浴びせた。
「結構、結構、さて、これで三人の代表選手が決まった。選ばれなかった者たちもみんな打ち揃って、
代表選手を応援してくれることを信じておる。選手に――」
ダンブルドアが突然、しゃべるのを止めた。
炎のゴブレットが再び赤く燃えたのだ。
ダンブルドアがさっとゴブレットを眺めた。
「ハリー・ポッター!!」
ゴブレットは意気揚揚と広間の人間の複雑な心境も露知らずに名前を叫んだ。
「そして、
・
」
大広間の全ての目が、いっせいに自分達に向けられるのを感じながら、有名人二人は真っ赤になってうつむいていた。
当然のことながら、誰も拍手しない。
大広間は凍りついていた。
上座のテーブルではマグゴナガル先生、それに何とスネイプ先生がダンブルドアの元に行き、何事かと囁いていた。
ダンブルドアはギュッと眉根を寄せ、マグゴナガル、スネイプ両名に話している。
「わ、わたし、名前いれてないわ・・ね、ね、信じてくれるでしょう?ハーマイオニ―!!」
は救いを求めるように親友にささやいた。
「僕も名前なんか入れてない!彼女だって入れてないこと二人とも知ってるだろう!」
ハリーは放心しているロン、ハーマイオニ―に言った。
グリフィンドール生全員はあんぐりと口を開けて二人を見つめている。
スリザリン席では、ドラコ・マルフォイがただただ一人、
の方を見て驚いていた。
「ハリー・ポッター、
・
」
ダンブルドアがようやく二人を呼んだ。
「ハリー、
!ここへ来なさい」
「い、行かないと」
がハリーをつついた。
二人は同時に立ち上がり、教職員席に向かった。
とてつもなく長い距離を歩かされているような感じだった。
生徒達の目はハリー、
に釘付けだ。
教職員席に着くと、先生方が遠慮もせずに驚ききった顔で二人を見つめてきた。
スネイプなどは穴のあくほど
を見ているし、ダンブルドアは微笑んでいなかった。
「さあ、あの扉から、二人共」
マグゴナガルが声をかけた。
こっちは普段よりずっと厳しい顔をしていた。
二人はドアを開けた。
中には先刻の三人、ビクトール・クラム、フラー・デラクール、セドリック・ディゴリ―が壁にもたれかかっていた。
「どーかしたーのでーすか?」
フラー・デラクールはシルバー・ブロンドの髪をさっと振った。
「なーにか伝言を伝えにきーたのでーすか?」
彼女は一番近くにいた
に聞いた。
「い、いえ・・そうじゃ・・なくて・・・」
は女さながら、フラーのあまりの美しさに見とれてしまった。
「GREAT!紳士諸君、あいや、淑女もお二方おったな!失礼!」
ボンと後ろのドアが再び開き、ルード・バグマン氏が入ってきた。
バグマンはハリーと
の腕を引っ張って、三人の前に引き出した。
「ご紹介しよう!信じがたいことかもしれんが――あーーうーー三対抗代表選手それぞれ四、五人目だ。」
バグマンは言葉を濁した。
ビクトール・クラムはむっつりとした顔で、たちまち暗い表情になった。
セドリックはハリーより、
を見て、びっくりしていた。
フラー・デラクールは長い髪をパッと後ろにやり、ホホホッとお上品に笑った。
「とってーも面白いジョークですーこのお二人が代表選手、信じーらーれませんわ〜〜〜ミスター・バーグマン」
「いんや、ジョークではないですぞ、ミス・デラクール。たった今ハリー&
の名前が「炎のゴブレット」
からでてきたのだ」
バグマンが実ににこやかに説明した。
「でーすがー、ミスター・バグマン。こーれーは何かの間違いーでーす。このいとたち競技でっきませーん。
このいとたち若すぎまーす」
フラーが反抗的に言い返した。
「しかし、ゴブレットは決して嘘はつかない。それに年齢制限線をごまかすことは絶対にできんのだよ。
つまり、この段階で逃げ隠れできないだろう。これは規則、従う義務ありだ。ハリー&
はとにかくベストを尽くす他
あるまいと――――」
バグマンが二人を見下ろしてにっこりとした。が、その時背後の扉が開き、大勢の人が入ってきた。
クラウチ氏、カルカロフ、マクシーム、マグゴナガル、スネイプ、ダンブルドアだ。
「ダンブリ―・ドールこれはどういうこーとですかー?」
「わたしも是非知りたいものですなぁ――三人、ホグワーツの代表選手が三人とは!?
開催校は三人の選手を出してもいいと伺ってはいないようだが??」
マダム・マクシーム、カルカロフがダンブルドアに詰め寄った。
「ちょっと待ちなされ、お二方、本人達にまだ聞いていまい。ハリー、
、君たちは炎のゴブレットに名前を
入れたのかね?」
ダンブルドアが聞いてきた。
「いいえ」
「決してそのようなことはしてません!!」
ハリーと
は激しい口調で答えた。
それから、大人たちの口論は延々と続いた。
マダム・マクシーム、カルカロフはもう一度、ゴブレットで選手選考を行うべきだと最後まで主張したが、
バグマン、クラウチ氏は選ばれた者は逃げることは出来ない。このまま続行だと言い張った。
ダンブルドアはゴブレットの火はもう、次回の試合まで火がつかないという事実をつきつけ、マグゴナガルは二人は
決して卑怯なことはしないときっぱりと言い切った。スネイプは黙って不機嫌そうに二人を睨んでいた。
そして、この後、部屋に乱入したムーディ教授は「誰かがゴブレットに強力な錯乱の呪文をかけて、二人の名前を入れたのだ」
という説をもたらしてくれた。
だが、最終的にダンブルドアは「どのようないきさつがあろうと、皆、結果を受け入れるべきじゃ」
としめくくり、一応事態は収拾した。
ハリー、
、セドリックの三人はようやく、真夜中前に部屋を出ることが出来た。
「それじゃあ、僕達、またお互いに戦うわけだ。」
セドリックがちょっと微笑みながらハリーに言った。
大広間は誰もおらず、真っ暗だった。
「そうだね」
ハリーはうつむいて言った。
「あ、えーと君は・・」
セドリックはここで
を見た。
「
・
。よろしく。」
彼女は何とか笑顔を作り、自己紹介した。
「ああ!君のこと知ってるよ!一度話がしたいなあってずっと思ってたんだ!確か去年、おとといクィディッチの
実況してた――そうなんだ。君の実況とってもいいよ!分かりやすくて、それに面白いな。
今年なくて残念だよーー」
セドリックは彼女を見て、ちょっと赤くなりながら、つっかえつっかえ喋った。
「え、ああ、そう・・それはどうも・・・ありがと」
落ち込んでいる
にはお褒めの言葉は全く頭に入らなかったらしい。
「ところで・・教えてくれよ・・」
玄関ホールに出た時セドリックが言った。
「いったいどうやってゴブレットに名前を入れたんだい??」
「入れてない」
とハリーは同時にうなだれて答えた。
「フー―ンそうなんだ」
二人にはセドリックが信じていないことが分かった。
「それじゃまた」
セドリックが言った。
グリフィンドール塔に戻る道すがら、二人は一言も口を聞かなかった。
寮に帰ると、フレッド、ジョージが「姫!!ばんざーい!!我らのジャンヌ・ダルク!!」とか言って、
にボーンと代わる代わる抱きつき、キスの雨を彼女に降らせた。
ケィティとアンジェリーナは
をどんどんとどつき、抱きしめた。
ハリーはハリーでやれ、これを食え、あれを飲めと寮生から色んな物を勧められていた。
「ア〜疲れた〜〜〜」
彼女が寝室に戻れたのは夜中の1時半過ぎだった。
「
」
ハーマイオニ―がまだ起きていて心配そうに呼びかけたが――
「御免、今日はもうダメ。お願い寝かせて」
と彼女は呟き、バターンとベッドに倒れこんだ。
携帯版で行ったアンケートにより、めでたくヒロインの試合出場が決定しました。