「おい、かごめ〜!本当にこの山に四魂の欠片の気配を感じたんだな?」

「そうよ〜でもなんで〜!?さっきまで晴れてたのに急に大吹雪だなんて〜もう〜嫌になっちゃう!!」

「そうですな、やはりあの老婆の言うとおり山の天候は変わりやすいものですからな!」


大吹雪に胸まで覆われた犬夜叉達は、雪をかきわけかきわけ、氷山の中腹を

歩いていた。


「近い、近いわ!湖のあたりに四魂の欠片の気配が!」

「本当ですか?かごめ様!ですがこのままではまともに進むことも不可能になりそうですぞ・・」


「弥勒様?弥勒様〜!!ちょっと犬夜叉、弥勒様の姿が!!」

「何だって、おい弥勒、弥勒!!返事をしやがれ!!埋まっちまったのか?」


突如、かごめと犬夜叉の前に突風と雹が吹き荒れ、

彼女の前を歩いていた法師の姿をぷっつりと消してしまった。


「法師様、法師様・・」

「む・・このような雪深き山にどなたです?」

顔まで深い雪にうずまった弥勒に手を差し出す者がいた。その女は腰までかかる美しい銀髪を垂らし、

銀糸を刺繍した豪華な白絹の着物をまとっていた。

「ここにおられてはこごえてしまいます。さぁ、こちらへ」

「お連れの方は、私の供の者が見つけて屋敷の方に運んでくれます」

「それではお言葉に甘えて・・」

弥勒がのあまりの美しさに目がくらみ、ぽわわんと呆けた表情で彼女の手を取ると、ぷっつりと彼の周りだけ襲い掛かる大吹雪がやみ、森への道がすーっと開いた。



一行はこぢんまりとした屋敷でいろりを囲み、甘酒と、湯気の立ちこめる鮭と豚肉と野菜のごった煮をおごってもらい、

遭難して死にかけるところを免れた。


「それにしてもあなたのようなお美しい方が、なぜ、かような山中に一人でおられるのです?」

ひととおり食べて体が温まったところで、美しい女には目がない弥勒が尋ねた。

「私はこの氷山を守る雪女です。この山に巣食う妖怪が人里に悪さをせぬよう監視し、遭難した村人を助け、無事に里に送り届ける仕事をしております」

「さようですか。それはいささか大変なお役目ですな。にしてもなんともったいない!!あなたのような綺麗な方に、私は山に入らなければお会い出来なかったではありませんか!!」

「法師様?何を・・」

弥勒は目にもとまらぬ速さで彼女の側ににじりより、そっと、透き通りそうな細く白い手を握った。

「先ほどからあなたの手が氷のように冷たいので、私の暖かい手で暖めて差し上げているのです!!」

「なーにが私の暖かい手だ・・わざとらしい!触りたいっていう下心みえみえじゃねーか・・」

犬夜叉がふんっと鼻を鳴らして言った。

「犬夜叉・・今の奴にはおら達の姿は見えておらんぞ・・」

可愛らしい子狐妖怪、七宝がためいき一つついた。

「弥勒様、しょうこりもなくまたナンパを・・」

かごめはあきれはててただただ眺めるだけだった。



「可愛い犬耳・・」

「てっ、お前!いきなり何しやがるんだ!?」

衣擦れの音もさせずに犬夜叉の背後に忍び寄ったは、ぴょこんと彼の銀髪からつきでた犬耳を愛しそうになでていた。

「ごめんなさい、あまりにも可愛いし珍しかったので。銀髪や目はそっくりなんだけどちょっと短めだし、もこもこの真っ白な毛皮は羽織ってないのね・・残念ね・・あの人にちょっと似てるのだけれど」

「もこもこ?真っ白だぁ!?な、なんでぇお前・・なんかそれって聞いてりゃ、その特徴、俺の一番むかつく奴に似てるじゃねーか!!」

まっかっかになって怒る犬夜叉にびっくりして、手を離したは申し訳なさそうに謝っていた。

しかし、頭の中は過去の懐かしい思い出に飛び、こころなしか手を頬にあて頬自体も赤く染まっていた。



「ねえ犬夜叉、私も考えてたんだけど、あの雪女さんは殺生丸の知り合いか、彼女かな?」

たちまちそれを目ざとく見つけたかごめが、ひそひそと犬夜叉に耳打ちした。

「ありえねー絶対にありえねー!!あのつんけんした奴に女がいるなんて、ましてや寄り付こうなんぞ考えられねえ!!」

犬夜叉は愛用の鉄砕牙をしっかりと握り締めたまま反駁した。

「擦り寄っただけで刀のさびにされるのがおちでぇ!!」

「この鉄砕牙に誓っても断言してやる!」

「犬夜叉・・あんたそこまで断言する自信ってどっからわいてくるのよ?」




「あの・・雪女のお嬢さん、お名前は?」

と申します」

「とても可愛らしいお名前ですなぁ!!ところで一つ私の頼みを聞いていただけますかな?」

「法師様の頼みとは・・いったい何でしょう?」

「是非、私の子を産んでくだされ!!」

犬夜叉とかごめが殺生丸談義で盛り上がっていたころ、弥勒は再び、の手を愛しそうに握り

口説いているところだった。



「あの弥勒は妖怪のおなごでもお誘いの対象なのか?」

犬夜叉の肩にぴょこんと飛び乗った子狐妖怪、七宝が冷たい視線を弥勒に投げかけながら言った。

「そうみたいよ、弥勒様の手にかかれば妖怪も人間も境目なしね」

かごめがしれっと言った。

「けっ、付き合ってられるか・・」

犬夜叉は大嫌いな殺生丸の話題がでたのでむすっとしていた。
























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