「だぁ〜いいお茶なのだ♪あれ、美朱ちゃんは?」
今、朱雀と白虎七星士たちは、テーブルを囲んで優雅にお茶をしていた。
星宿が鬼宿と剣で渡り合い、見事、鬼宿の急所を外して刺した
ことで彼の生命力を弱め、操っていたこ毒の力も同時に打ち破ったのだった。
「野暮なこと聞かないの。鬼宿と一緒に決まってんでしょう!」
柳宿が井宿の素朴な疑問に、笑って答えた。
「あんな格好いい人に想われてるのね〜巫女様は〜いいなぁ〜」
はお茶をすすりながら、ぬぼーっと背の高いハンサムな青年と朱雀の巫女の恋路にひたって
幸せな気分になった。
「お前なぁ・・その器量で今までそんなに誰かに想われたことなかったんか・・」
翼宿が横からあきれたように突っ込んだ。
「うるさい、余計なお世話よっ!!」
翼宿の余計なひとことに、一気に春の気分から冬の気分に
落とされたはガタンと乱暴に茶飲みを置いて怒鳴った。
「あんた達、が女だとわかった時点から急激に仲悪くなったわね・・」
柳宿がやれやれと言った。
「気にすることないのだ・・翼宿がもともとひとこと多いのだ〜♪」
「それどーいう意味や!!」
井宿は能天気に答え、翼宿にすごい剣幕で怒鳴られた。
黄色いつるばらやすいかずらの甘い匂いのする晩、は皆がきゃあきゃあ談笑している
小部屋をそっと抜け出て、夜風に当たっている皇帝の隣に行った。
「星宿様、どうなさいましたか?」
彼女は寒そうにボルドー色の宮廷衣装の上着をかきあわせると、物思いにふける彼に優しく尋ねた。
「いや、鬼宿と美朱がこれでようやく幸せになれるのだなと思うと
寂しいのやら嬉しいのやらよく分からなくなってな・・」
彼は彼女をちらと見ると、ぼんやりと呟いた。
「陛下、陛下のそのお気持ちわかります、その気持ち・・私も婁宿と鈴乃の間で
ずいぶん苦しみました。親友と想い人の間では誰しも複雑な気持ちになるものです」
「そうだな、ところで、ものは相談なのだが、実はこの間から右大臣、その他の臣下から妃をめとれとせっつかれていてな・・
あれこれ後宮の者を勧められるのだが、どうも気が乗らぬ。
どうすればよいものだろうか・・私は幼き頃からずっと憧れ、想い続けていた美朱以外、妃に迎えるつもりは毛頭ないのだが・・一国を治める身ではそうも
いかなくてな・・誰か正式な皇妃を選ばなくてはならぬのだ」
「それでしたら柳宿はいかがでしょうか?星宿様、あんなに陛下を慕っていますし、気立てもいいですし、
とても面白いし、美人ですし」
彼女はここでポンと膝をうち、最もよいだろうと思われる解決策を提案した。
「何を冗談を申すのだ・・そなたは面白い娘だな・・あれはれっきとした男だ・・無理なのはわかっておろう」
途端に星宿は苦笑してその案を退けた。
「おっ、男!?うそ、あんな美人が――」
は透け感のある楊柳をあしらったシフォンの白絹の袖で口元を覆い、酷くショックを受けていた。
「なんと、本当に知らなかったのか!?」
「はい・・って私だけですか!?他の皆はもう知ってるんですか!?」
「ああ・・多分」
「、そなたでは無理だろうか?」
ここで星宿は急に真面目な表情になり、彼女の白絹の袖から突き出た手をとって囁いた。
「え?」
突然のことにはポカンと口を開けるばかりだった。
「そなたが妃になるのは嫌か。そなたとなら上手くやっていけそうだと思うのだが――
そなたなら、きっと、美朱を失った私の心の隙間を埋めてくれるだろう――」