「ともかく鬼宿がいなくなって――」

「お、お待ちどう――」

「こ、こちらのお客さんもどうぞ――」

定食屋の主人がつい先ほどまで柳宿と朱雀の巫女が座っていた

粗末な机がめちゃくちゃに破壊されているのに驚愕し、

ひどくおろおろしながら、二人とその後ろの席に移動した

の頼んだ料理を置いていった。


(鬼宿・・二十八星のうち、朱雀星の一つの名前。やはり、この二人は――)

もくもくと棒々鶏を箸でつつき、饅頭をほお張りながら

は熱心に前の二人の会話を聞き取っていた。


「まあ、あんたと鬼宿のことは私には関係ないけど――」

柳宿が何気な部屋の隅に視線を移した時だった。

そこでは定食屋の主人と、その連れの男がひそひそと密談を交わしていた。

彼らはこれ以上ない危険な目つきで、にんまりとこちらを見てほくそえんだ。


「美朱、食べちゃダメ!そこのお兄さんもよ!」

柳宿が焦って叫んだ時はもう遅かった。

朱雀の巫女は出された料理を完食し、もわずかであるが料理を口にしてしまったのであった。


途端にううっとうめき声があがり、その朱雀の巫女がのどをおさえて苦しみだし、

バタリと床に倒れて動かなくなってしまった。


「ちょっと、お嬢さん!どうした?しっかりしろ!」

がちゃんと箸を机に放り投げて、駆け寄ったは朱雀の巫女を抱きかかえ

頬を叩いた。


その背後でブンと金属音がし、山賊の湾曲した大きな

長剣が、柳宿の上に振り下ろされた。


柳宿ははっしと剣を受け止め、「美朱、起きて!こいつら山賊よ!そこのお兄さん、早く彼女を

連れて逃げて!」



柳宿はちらりと後ろを振り返り、が懸命に頬や胸を叩いて朱雀の巫女を

介抱してるのをみやりながら叫んだ。


バキッと長剣が折られる音、柳宿が驚愕して油断した山賊を強烈なキックで蹴り飛ばす音――


ゲホッゲホッとその時、懸命な手当てのかいあって、朱雀の巫女の喉につまっていた

饅頭が飛び出し、彼女は無事の腕の中で息を吹き返したのであった。



「良かった、早く逃げるぞ!」


は美朱を抱き起こすと、素早く耳元で囁いた。


「そうはさせねえ、その金よこしな!!」


途端にいつ出口のほうに回ったのか、もう一人の山賊の連れが


斧をかまえてせまってきた。



「危ない!」

ただならぬ危機を感じ取ったは、美朱を乱暴に突き放すと、黒革のブーツから懐剣を抜き、

目にも留まらぬ速さで自分の二倍はある相手の、こめかみめがけて投げつけた。


水色の冷たい気が彼女の全身を覆い、懐剣はまっすぐに飛んで

男の額に突き刺さるのと同時に、後ろからもう一つの宝剣が飛んできて男の

背中に突き刺さった。



その時、朱雀の巫女は信じられないものを見たのだ。

の右首筋に、真っ白な白虎七星士の証である文字が浮き上がるのを。


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