「康琳・・」



「柳宿?柳宿!?」

「何や、お前どないしたん・・何やこの嫌な感じ!」


翼宿、軫宿とともに馬をすすめていたは背後で自分を

呼ぶ声がしたような気がして振り返った。

翼宿も何か感づいたらしい。


「柳宿〜!!」

「あ、待ってえな、俺も行くで!!」


「間違いない、柳宿に何かあったのよ!!」

あわてて馬の向きをかえさせ、狂ったように鞭を当てながらは叫んだ。




「やあっ、やあっ!」

残雪を蹴散らし、馬を急き立てる声がしたので鬼宿と美朱は振り返った。

馬から勢いよく飛び降りたは、帽子は脱げ、コートもしわくちゃの

ひどい有様でかけて来た。


「何で柳宿だけこんなことに!?あなた達、いったい何してたのよ!?」

「ずっと一緒にいたんじゃなかったの?」

「答えなさいよ、何であなたと一緒だったのに・・こんな・・」


憤怒の形相でつかみかかったに、鬼宿はなんともやりきれない顔で彼女から顔をそむけた。


・・静かになさい・・ドジ踏んだのは私のほうなんだから・・」

の乱れ髪に手をかけた柳宿は、まるで実の妹にでも話しかけるように優しかった。

彼の額からは一筋の血がだらだらと流れ、立派だった濃紺の服はびりびりに引き裂かれ

そこから大量の出血が見られた。

その肉体はもう起き上がることも無理なありさまで、呼吸することもしゃべることも苦しそうだった。


「星宿様のお妃に・・あんたならなれると思ったんだけどな」

柳宿は生き急ぐようにしゃべり始めた。

「私、あんたが来てくれてとても嬉しかったのよ・・康琳が生きてりゃあんたぐらいの

 歳と背格好になってたかなあ・・知ってる?あんたのお陰で私は康琳の

 面影を吹っ切ることが出来たのさ・・私が康琳にしてやれなかった分まで

 あんたが皆埋めてくれたの・・だからとても感っ謝っ・・あ・・」


「柳宿・・」


その場にいた全員に戦慄が走った。


鬼宿の腕に抱かれ、に手を握られた柳宿が静かに息を引き取ったのだ。

 
助けを呼びにいこうとしていた美朱も、涙を浮かべて振り返った。



は深い悲しみを胸に秘めたまま、そっと後ろに引き下がり、

走ってきた美朱は柳宿の遺体にかしずき、泣き叫んだ。




「おい、、鬼宿・・柳宿は・・」


一足遅れて翼宿が、残雪を踏みしめてやってきた。


「たった今、死んだの・・」

はそっけなく言うと、翼宿の側を通り過ぎた。

いつの間にかその他の人々が遅れてやってきて、次々と柳宿の死に立ち会った。


「あ、あほか・・あほか・・あほか・・お前は!!」


「本当だ・・青龍の奴らに殺された・・」


鬼宿は静かに涙を流し、襲ってくる絶え間ない悲しみに耐えながら翼宿に教えてやった。


「このあほんだら!目ぇさまさんかい!根性無しかいおのれは!!」


柳宿の死を到底受け入れられない翼宿の怒鳴り散らす声、黙って彼の肩を抱く鬼宿、

井宿の袈裟を涙で濡らす、その他の人々も皆、涙にかきくれていた。









皆、泣きたいだけ涙を流してしまうと、後ろ髪を引かれる思いで

丁寧に丁寧に柳宿の弔いをはじめた。

軫宿は神水の壺をあけると、柳宿のびりびりに切り裂かれた

服の上に注いで手をかざした。


すると服の裂け目や血糊は消えてしまい、彼はまるで眠っているかのように見えた。







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