「姉ちゃんら、ほんま、別嬪やなぁ〜優しくしてやるから酒盛りの相手してくれんかなぁ?」


「ね、姉ちゃん・・」


「何で私まで!?」


栗色の髪の陽気な赤ら顔の男が、星宿に、藍色の髪の豪快な男がにべたべた抱きつきながら

誘ってきた。


星宿は自分が男と思われていないことに、は男装がばれたことにショックを

受けて怒っていた。


「どーやら、私達も女と思われてるようですわね〜、ま、そんなに驚くことはないですわ、だって女の美朱より美しいですから〜」


「ということよ、ちゃん!」


「誰が、ちゃんだって!?」


ポンッと肩を叩いて冗談交じりに言ってきた柳宿だったが、二人はまだぶすっと膨れていた。



しばらくして、「こうなったら美朱のいうとおり、おとなしくしてましょう!」という柳宿の提案で、山賊たちの酒盛りの相手をさせられることになった

と星宿だが、星宿は元来のナルシストぶりを発揮しており、「さぁ〜ぐっと飲んでください、まぁ〜いい飲みっぷり!」と

かさんざん相手をおだて、見事に遊女の真似事を

やってのけていた。




酒が一杯、二杯、三杯と入るたび、そして、酒のお相手に美人も三人揃ったこともあって

盛り場は大盛況となってきた。



柳宿はテーブルの間を歩き回って、皿に丁寧に盛り付けられた料理を配っており

と星宿はそれぞれ自分にお熱なお相手に言い寄られて、身動きできない状況だった。


「姉ちゃん、ほんま体はほそっこいし、別嬪やな〜、どや、お前もこれ食べへんか?うまいで、ほら、口あけてみ」

「ちょっと、どこ触ってるんだよ!?」

「姉ちゃん、体はがっちりしてるけど、ほんと別嬪だなぁ〜」

「おほほほ、よく言われますけど、柳宿ちゃんの方がスタイルばっちりですし〜」

「あんなの好みじゃねぇ!」

「お前だけは殺したる・・」

、首に文字浮かんでるが・・」

「星宿さん、今すぐ殺っていいですか?」

「落ち着け、、早まるな!」

「そうよ、遠慮なく殺っちゃいましょうよ!」

「待て、柳宿!」

星宿は怒りに燃える二人の七星士をなだめると同時に、どっといつになく心労が増してきたことを感じたのだった。




そんな折、隅の席の方で男達がやけ酒をあおり、ぶつぶつと不満を並べているのが聞こえてきた。

「それにしても栄研のアホンダラ、幻狼が留守の間に、勝手に頭の座を奪いやがって・・」

「まったくだ、能無しのクセしやがって・・」

「これが、またあの不細工な面でロリコンっつうのがきついなぁ」

「ま、さっきの娘っ子の貞操は終わりやな!」




「な〜ん〜だって〜!?」

「柳宿!」

怒りが頂点に達した星宿とが、ドンッとテーブルに手をつくのは同時だった。


突然、山賊たちが食事していたテーブルが豪快にひっくり返り、凄い力で部屋の隅の方に押されて砕け散るのは

あっという間のことだった。







「な、なんやこれ?」「お、お前らなんちゅうざまや・・」


ところかわり、頭のところに美朱を連れて行って戻ってきた攻児は、目の前の信じられない光景に固まっていた。


柳宿は、倒した山賊どもの山の上に乗っかってご満悦だし、

は「そこのお兄さん、覚悟はいいか?」

と乳白色の柄の宝剣をちらつかせて、物凄い形相でせまってくる有様だった。


「美朱はどこだ!?」

「ま、まあ落ち着け、兄ちゃん・・」

「うるさい、早く彼女の居所を言え!」


物陰に隠れていた星宿も宝剣を持って飛び出し、攻児はこの上ない危険な状況に追い込まれてしまったのだった。

その後、攻児を脅して朱雀の巫女を救出した星宿は彼女を何度も何度も

抱きしめて「大丈夫か?怪我はないか」と尋ねる始末だった。

「えっらい怪力やな〜」

「あたりまえだろ、この人は私達の中で一番力が強いんだから」

その背後では、攻児が柳宿が壁にパンチで空けた大穴を眺めて、腰を抜かすのを尻目に

が得意そうに説明していたのだった。


柳宿が空けた大穴の破片で気を失っていた大男、栄研が起き上がったときは

すでに遅かった。


綺麗な顔立ちの星宿が物凄く怖い顔で、大男の鼻っ面に剣先を突きつけて


「この娘は朱雀の巫女だ――指一本でも触れたら貴様を殺す!」

と脅していたからである。


その後、たちは、朱雀の巫女のたしなめによって(本当は柳宿が腕を締め上げて脅かしたのだが)、山賊の頭、栄研から五人目の七星士、翼宿が

山賊の仲間にいることを突き止めることが出来たのだった。


その後、突如、開け放たれた窓から突風が吹き、七星士達は思わず目を瞑った。


全員が目を開けた時には、朱雀の巫女の姿が忽然と消えていた。



「げ、幻狼・・」


攻児に剣を向けていた、はおそるおそる彼に剣を向けるのをやめて目線の先を追った。

「ひさしぶりやんけ、栄研!」

「旅から帰ってきたら、お前が頭やと?フン、笑い話にもならんわ!おまけ不細工な面して嫁まで

 もろたとはけっこうなこっちゃな!」

威勢のいい声とともに窓から入ってきたのは、赤毛の長髪をさっそうとなびかせた、目つきの鋭い黒ずくめの男だった。

彼はかっさらった朱雀の巫女を肩に背負っていた。


「あれ誰?」

は思わず壊れた壁にかかっていた攻児に尋ねてしまった。

「あれがほんまの俺らの頭や」

攻児は得意そうに言った。


「こいつはもろとくで」


「待てっ!」

「そうはさせぬ!」



幻狼の挑戦的な言葉に、星宿とが剣を振り上げて駆け出したのは同時だった。



だが、次の瞬間、彼らは幻狼の繰り出した呪札から繰り出された狼に

襲われてしまった。


「美朱ぁ〜!」

星宿がむなしく叫ぶのを尻目に、幻狼は、一番近くで狼と懸命に格闘している

に目をかけ「ほな、さいなら」と言い放つといつ果てるとも知れぬ夜の闇へと

消えていったのである。


「逃がすか・・あいつ!」

まず、最初に狼に馬乗りになられて、宝剣をかじり取られそうになっていた

水の気を一気に剣に集中させて叩ききった。


それから星宿が同じく剣で狼を切り裂き、怒り狂った栄研が文箱に隠しておいた

鉄扇を取り出したのは同時だった。

彼が鉄扇を振るうと、ところかまわず炎が火炎放射のように

噴出し、狼や柳宿たちを襲った。


は「うわぁああ!!」とかんだかい悲鳴を上げ、慌てて宝剣を床に突き立て

水の気を集中させ、結界を張ると暴れ狂う炎から身を護った。



「星宿さま、逃げるの早い〜」

暴れ狂う炎がようやく治まると、ちゃっかりとの後ろに隠れていた柳宿が顔をだし、

いつの間にか外の城壁にぶら下がっている、星宿を見つけて言った。


「逃げたのではない、美朱を追ったのだ、二人とも平気か?」


「大丈夫です〜ちゃんの結界の後ろに隠れてましたから〜」


「だからちゃんじゃないってば!」

なんやかんや言いながら、三人は次々と砦から飛び降りて夜の闇に消えていったのだった。

「ずいぶん探したぞ!貴様――よくも美朱に手を出したな!」

「で、その娘はいったいどこにいるんだ、お兄さん?」

攻児とともにいぼたの茂みから、栄研が待ちかまえる砦へと

忍び込もうとしていた幻狼は、同じく茂みに潜んでいた

星宿、に両側から宝剣を突きつけられてしまった。

彼は冷や汗とともに「ひっ!」と小さくうめき、

その場で両者の凄い剣幕に凍り付いてしまった。

「星宿、柳宿、それに!無事だったぁ?」

その時、別の茂みからがさごそと動き、栗色の髪のお団子頭に結った朱雀の巫女が

嬉しそうに顔をだした。

「美朱!」

「美朱!あんた――」

「美朱さん、え?いったいこれは――」

星宿、柳宿、の三人は巫女の予想外に元気な姿にあっけにとられるばかりだった。

「わけはわかったが――美朱、本当に彼らに力を貸す気か?」

「うん、だって、この中に翼宿がいるかもしれないし、それにほっとけないよ!」

こっそりと砦に忍び込んだ星宿は、信じられない面持ちで、幻狼たちの頭目争いなど山賊間の対立の様子を説明した美朱に尋ねていた。

「あー、ほんまびっくりした!死ぬかと思たわ」

「そらお前は両側から剣二つやもんな・・びっくりするもなにもあらへん」

「まあ、お兄さんが美朱さんに手を出してたら、本当に殺してたけどな」

今だぶすっと膨れる幻狼に功児は可笑しそうにいい、は得意そうに

言ってやった。

「こいつ・・綺麗な顔して後から恐ろしいことをさらりと・・」

「ああ・・」

「見た目とはえっらいちゃうな・・」

幻狼と攻児は天使のような笑みを浮かべて、悪魔のごとき所業をやる寸前だった

の顔をちらりと見て、ひそひそと喋っていた。




「奴らがいたぞ!」

大勢の足音がこちらに向かってくるのが聞こえた。

「何?気づかれた!?」

「まかしとき!」

まずそうに唇をかみ締めたに、幻狼は彼女をちょっと横におしやって

懐から呪札を取り出して叫んだ。


「いでよ、狼!」


「へ〜これはまたずいぶん強そうな狼だこと・・」

なんと呪札から現れたのは狼ではなく、美味しそうなチョコレートケーキだった。
幻狼のこれ以上ない引きつった顔に、張り手を食らわせるごとく、

は鋭く突っ込んでやった。


「あ、あほ!これは間違えたんや!もいっぺん、いでよ、狼!」


幻狼は真っ赤になって、の方を振り返り、さらに気合を入れて懐から呪札を取り出したが

それはむなしく、ハンバーガー、アイスクリーム、フライドポテト、キャンディ、ホットドッグなどの

色鮮やかな食べ物に変わって床に落ちたのだった。


「なんじゃこれは!?」

「美朱!」

「な、何?」

「あんたでしょ?」

「まだ鈴野(白虎の巫女)の方がましだった・・なんか、今の朱雀の巫女様に仕えるのやめたくなってきた・・」

「気持ちわかるわ、兄ちゃん・・」

「おのれが、おのれが、やったんか!?」

「い、いやぁつい・・お腹すいてて・・」


は恥ずかしさとアホさで悲しくなって、攻児の側で泣いているし、

柳宿は美朱を叱り付けているし、幻狼は一番恥をかかされたのでむちゃくちゃ怒っていた。




「危ない!」


星宿がはっとこの馬鹿騒ぎから我に帰って、振り返った時は、

真っ赤な踊り狂う炎がたちめがけて飛んできた。

だが、炎は途中で散り散りに分散し燃え散って床に落ちた。


「ふ〜危ない、なんとか間に合ったが・・」


その声になんとか宝剣を抜き、地面に突きたて、水の結界を張っただったが

辺りをぐるりと栄研とその手下どもに囲まれていた。


(なんやこいつ・・首に白い文字が出てきよったで――)


真っ青な水が宝剣から勢いよく噴出し、ドーム型に星宿達を取り囲んだ時、

彼女の隣にいた幻狼は、はっきりと見た。


彼女の首筋に真っ白な文字が浮き出て光りだすのを。



「ようきたのう、幻狼!狼はもうでてけーへんのか?」

鉄扇をかまえた栄研は、雄猫のように意地悪く歯をむき出して笑った。



「星宿様、やっちゃいましょうよ!」

「だめだ、柳宿、この中に翼宿がいるかもしれんのだ!」

「それに結界から出るんじゃない、あの鉄扇で焼き討ちにされるのがおちだ!」

は宝剣を片手に、おっちょこちょいの朱雀の巫女やその他全員に大声で命じた。


「くそっ、他の仲間ともやらなあかんのか!」

「厄介やな!」


の側ではくやしそうに攻児と幻狼がわめいていた。


「その結界からでてけーへんつもりか、幻狼?だったら、こっちから破りにいくで!」

栄研はそれに味をしめて、仲間に直接攻撃の命を下そうとした。


「あ、馬鹿っ、勝手に出るな!」


が気づいて叫んだ時にはもう遅かった。


朱雀の巫女が結界から飛び出し、自分の三倍はある相手に立ち向かっていったからである。


「鉄扇、返せ!それは幻狼のものよ!」

彼女は栄研の肥え太った腕にしがみつき、鉄扇を取り返そうと懸命に格闘していた。

「幻狼、ちょっとでも動いてみ、この女を絞め殺すで」美朱はむなしく栄研に捕まってしまったのであった。

「チッ、どこまでも汚いやっちゃな・・」

「今下手に動いたら、巫女は助からない。どうすれば・・」

翼宿のくやしまぎれな言葉に、は自分の無力さを嘆き、がっくりと剣にすがりついて叫んだ。



だが、朱雀、白虎七星士達が次に見たものは信じられないものだった。



なんと、どこからともなく朱雀七星士のうちの一人、鬼宿が現れて

栄研達に飛びかかって、床にぶちのめしていったからである。

「く、くそぉぉ・・」

床に伸びた栄研が鉄扇をつかもうとした時は、全てが終わっていた。

「おっと・・おっさん、動くな!」

いつの間にか結界から抜け出した、が宝剣の切っ先を栄研の鼻っ面に突きつけ、

そのスキに幻狼が床に落ちていた鉄扇を取り返していた。


「一歩遅かったな、栄研、こいつは返してもろたで」

「頭目争いもここまでやな、栄研」


幻狼、攻児はにんまりと言った。



「兄ちゃん、おおきに」


「礼なんかいらないよ。そんなこと――あんたらしくない。それにあんたが勝つってわかってた。ここの頭にふさわしいのはあんただけだ」


栄研から宝剣を下げたに、翼宿は片手を差し出した。


はにやりとして、差し出された手を握り返して言った。






今、山賊達は朱雀の巫女達に無礼を働いたことを深く謝罪していた。


朱雀の巫女は快く彼らの謝罪を受け入れ、全てのことを許した。



その後、翼宿のことを尋ねた朱雀、白虎七星士達は、受け入れがたい事実を目前としてしまった。


なんと、翼宿は先代の頭の名前で、その男はすでに亡くなっているとのことだった。


朱雀の巫女は愕然と肩を落とし「鬼宿・・」と呟き、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


だが、その後、山賊の一人が持ち出した「北の長江で死んだ人間を生き返らせる者がいる」


との話しに巫女は色めきたった。



結局、山賊たちは巫女一行に食事までおごってしまい、旅立つ彼らの見送りに


まで出てきてしまったのであった。


一人はしゃいで山賊達に別れの挨拶をし、ぶんぶんと手を振る朱雀の巫女を尻目に


たちは黒、白、鹿毛の馬を向け、旅立っていった。



「おっ、あの兄ちゃん、今、お前に向かって頭下げたで!」

攻児の言葉どおり、が馬の足掻きを緩め、幻狼に向かってちょいと頭を下げて、別れの挨拶をしていたのだった。

「あ、ほんまや」幻狼はぼんやりと呟いた。

「惜しいな・・あの女みたいに綺麗な兄ちゃんと、純粋なのかあほなのかわからん娘と別れんのは」

攻児がちらっと幻狼を焚きつけるように言った。

「朱雀の巫女と白虎七星士の一人か・・お前、ほんまはいきたかったんちゃうか?」

「あほぬかせ、俺は頭やぞ。先代の意思もお前らも捨てられっか・・」

「ほんまにそれでええんか?」

幻狼は残念そうに呟く功児に、ピシッと言ってのけたが、

心の中ではあの連中のことが気になって仕方なかったのだった。

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