ルーピンとの結婚式はルーマニア、ブラン城城下の正教会でひっそりと行われた。
式にはフェリシティー伯母、ルーピンの昔からの知り合いである司祭様、の代母であるシスターしか出席せず、
非常に簡素なものとなった。
一人の司祭が香油入れを持ち、それを振っていい香りのする金の香油を巻き始めた。
その後から大きな十字架を捧げもった司祭が続いた。
聖なるイコンが並ぶ荘厳な祭壇の中央では、白一色できちんと正装したルーピンが花嫁を待っていた。
しばらくすると、無数のダイヤモンドとルビーが散りばめられたティアラを被り、楕円形のルビーのイヤリング、
金鎖に繋がれた二列のルビーのネックレスを身につけた、純白のウェディングドレス姿のが
フェリシティー伯母に付き添われてドレスの裾を引きずりながらやってきた。
ルーピンがの手を取り、祭壇へ招くと司祭は青い銅版刷りの本を開いた。
彼は長々と祝福の言葉を読み上げ、新郎の頭に月桂樹の冠をかぶせた。
それから司祭は白バラで作った冠を新婦の頭に被せた。
ルーピンは銀のゴブレットでワインを飲み干し、それを同じようににも飲ませた。
最後に司祭が「ここにミス・とミスター・リーマス・ルーピンを夫婦とする」
と宣言すると、ルーピンは花嫁のヴェールを持ち上げ、出席者達が暖かく見守る中で
花嫁に口付けしたのだった。
今、ハリー・ポッターは腸がねじれる思いで二人が贈ってくれた結婚式の写真を思い出していた。
写真の中で幸せではちきれんばかりに微笑む。
彼の中で永遠に・は去ってしまい、今、この瞬間、彼の隣にいるのは・ルーピンという見知らぬ女性だった。
「結婚式の写真見たよ・・本当におめでとう」
「君のウェディングドレス姿、とっても綺麗だった・・」
ハリーはつっかえつっかえながらも、何とか平静を装ってお祝いの言葉をかけた。
「そう・・あの・・ありがとう」
だが、はそのことを持ち出されると途端に気まずくなってしまった。
「さあ、さあ、我々にはあまり時間がない。積もる話はあとでしてもらおう」
ムーディがダーズリー家の洗濯機に腰掛けている、ハリーを見て大声を張り上げた。
今、彼らは保護呪文が切れ掛かっているハリー、を安全なところへ移すため、大きな賭けを行っている最中だったのだ。
まず、ムーディはバイアス・シックネスがこの計画に背いた為、姿現し、ボートキー、煙突飛行ネットワークが使えなくなった
ことを告げた。
そして、彼は残された輸送手段として、箒、セストラル、フェリシティーのペガサス、の汗血馬、ハグリッドのオートバイ
で行き、その前にダーズリー家に集合した六人がポッター、に変装して護衛をつけ、本物のハリー・ポッターと・に
成りすましてかく乱させることを言った。
その後、ロン、フレッド、ジョージ、ハーマイオニー、フラー、フェリシティーはムーディが
持ってきたポリジュース薬を飲み干し、ものの見事にハリーとにばけた。
男性三名はハリーに成りすまし、女性三名はに成りすましていた。
それぞれ護衛がつくことになっており、フレッドにはアーサー・ウィーズリーが、フラーにはビルが、
ハーマイオニーにはキングズリーが、ロンにはトンクスが、フェリシティーにはムーディが、ジョージにはルーピンが
ハリーにはハグリッドが、にはビクトール・クラムがついた。
不死鳥の騎士団でもその縁者でもないクラムがの警護についたのにはわけがあった。
一つはムーディが騎士団員であるマンダンガスをの護衛に回そうとしたが、
彼が来るのを嫌がったため、やむなくの知り合いから適格な人員を抜擢したこと、
もう一つは、彼は他ならぬフェリシティーの属する魔法界の秘密組織、「KCC」のメンバーの一人
で魔法力と人柄の両面から信頼の置ける人物だったからである。
オートバイの爆音、何本かの箒が上昇する音、セストラル、ペガサス、汗血馬が飛翔する音で
一行はいっせいに大空目掛けて出発した。
だが、彼らは予測できなかったのだ。行く先に三十人あまりのデスイーターがてぐすねひいて待ち受けていることを。
一行がぞろぞろと上空を飛行していると突然、敵が杖を構えて移動集団に突っ込んできた。
夕闇に叫び声が上がり、緑の閃光がきらめいた。
騎士団とデスイーターはたちまち取っ組み合い、激しい乱闘となった。
ハグリッドのバイクが旋回したのが見えたとき、ハリーの「ヘドウィグ!」という悲鳴が響き渡った。
は手綱をぎゅっと引き絞り、フェリシティーのペガサスをとめさせてあたりをこらして見た。
ビクトール・クラムがに近づこうとしたデスイーターを殴りつけ、凄い力で
投げ飛ばすのがわかった。
も負けてはいられない。
彼女は自分を捕まえようとしたデスイーターの杖腕をつかんでねじりあげると「凍結呪文」でぶっ飛ばした。
ハグリッドはバイクの両側に現れたデスイーターをどすどすと蹴飛ばし、
フェリシティーは分厚いケースに入れたヴァイオリンを振り上げて、デスイーターの杖腕をなぎ払い、
腹に強烈な打撃を食らわしていた。