皆の緊張を取りほぐすようにファンシーな音が腕輪から鳴り響き、
「黒騎士が現れた」とモークからの連絡が来た。
「あのおせっかい、何でこんなややこしいときに限って・・」
のこめかみがぴくぴくと痙攣し、彼女のぼそりと呟いた
一言をハヤテは耳に挟んでしまった。
黒騎士のことが気がかりでいっせいに駆け出した皆に、
は重傷のハヤテを置いていくべきか迷ったが、ゴウキに
「先に行っててくれ。ハヤテは俺が!」の力強い一言に
押されて遅ればせながら駆け出した。
黒騎士は他の一般人が見たら酷くこっけいに思われるかもしれないが、
大真面目な顔でトマトを積んだトラックを襲撃していた。
さらに同じく狙いはトマトだと踏んだブドーと鉢合わせになり、
さっそく洋剣と日本刀を交えていた。
二人の戦いがあまりにも激しい為、剣や刀から火花が飛び散り、
後を追ってやってきたリョウマ達も手が出せないほどである。
黒騎士が突然、胸を押さえて後ずさった。
すかさず、「隙あり!」と見たブドーの容赦ない一太刀が浴びせられた。
黒騎士はばったりと仰向けに倒れ、ブドーの日本刀が再び振り上げられようと
した時だった。
鴛鴦斧の一片が道路脇の畑の中から発射され、ブドーの日本刀を引っ掛けて捕らえた。
はがさがさと畑の中から這い出し、「その男から離れろ。命だけは助けてあげる」
とワイヤーをくいっと引っ張りながら冷笑を浮かべて言った。
「これはこれは・・女、いらぬ心配だな!!」
ブドーは右腕でつかんでいた黒騎士のブルライアットを跳ね上げると、日本刀に引っかかった鴛鴦斧を
取り外し、くるりと一回転すると鴛鴦斧を投げ返してきた。
リョウマがナイスコンビネーションで隙を見て、牙を放った。
赤い光線がブドーの左胸を直撃し、は畑からジャンプして、投げ返された鴛鴦斧を
見事キャッチして取り戻すと黒騎士の下に降り立った。
ブドーは乱れ飛ぶ牙に数メートル程軽く吹っ飛ばされ、片膝をついてうずくまっていた。
黒騎士は「何やってるの?大丈夫?」と心配して肩に手を回そうとしたを利用すると、高く
地面を蹴って飛び上がり、腹立ち紛れにブドー目掛けてブルライアットの一太刀を浴びせた。
そして、唖然とするリョウマ達を尻目にどこかに消えてしまった。