「本当に情けねえ奴らだ」
「先祖に何と申し開きするつもりであろうな?」
リョウマはヒュウガに託された星獣剣ごとを引き上げながら、
背後で宇宙海賊の幹部達が大笑いするのを聞いていた。
「兄さん・・」
それがリョウマの怒りに火をつけた。
彼はの黒いサッシュから星獣剣を抜くと、振り向きざまに雄たけびを上げて
今までで最大級の炎のたてがみを放った。
すさまじい火炎放射が彼の両手から放出され、親玉たちに混じって
踊り狂っていた水兵達を一掃した。
「許さない。お前達は俺達が倒す!」
六人の若者の「打倒海賊の意思」が一つになった時、雄たけび山の銀河の腕輪と鴛鴦斧(えんおうふ)の封印が解けた。
そして、それは六人の戦士達の腕に引き寄せられるようにすっぽり収まった。
神聖な腕輪の力で戦闘衣に変化した五人と、新たな武器を手に入れた一人は次々と急な岩場から乱れ飛んで
宇宙海賊達に襲いかかった。
四人の仲間たちが水兵相手に好戦している頃、兄を殺されたリョウマと彼と引き換えに
命を助けてもらった氷の精は連れ立って宇宙海賊の幹部達に突っ込んでいった。
は黒い革ジャンの海賊が放った六発の銃弾を、まるでブーメランのように氷柱の剣を投げて全部はじき返して
リョウマをガードし、親玉が苦し紛れに放ったキャノン砲も大きく後ろ宙返りをして避けた。
そして、リョウマは疾風のごとく残雪に覆われた地面を駆け抜け、四人の幹部達をすれ違いざまに
どんどん切り捨てていった。
船長だけはやはり手ごわく、リョウマの星獣剣をフックで受け止め、自らの湾曲した剣を
抜くと切り捨てた。
また、伸縮自在なフックに左腕を引っ掛けられ、右へ、左へ弄ばれたリョウマだったが、
突然、ワイヤーつきの白銀の鴛鴦斧(一対になっている中華包丁のような双器のこと)が飛んできたので、船長は慌ててフックを
ひっこめてリョウマを放した。
「外したか・・運のいい奴め」
エゾマツの木にぐさりと突き刺さった片方の鴛鴦斧をワイヤーで引っ張って、
自分の手元へ返ってこさせるとは冷たい微笑を浮かべた。
「いいだろう、てめえら、今日のとこはこれで引き上げてやる!だが、これで勝ったと思うんじゃねえ!!」
「野郎ども、行くぞ!!」
炎の戦士と氷の精のコンビネーションでぼろぼろになった親玉は、捨て台詞を吐き、
空飛ぶカヌーやオートバイで手下達とともにほうほうのていで逃げ出した。
「兄さん・・」
宇宙海賊達が去った後、リョウマ達はヒュウガが落ちた地割れの辺りに行ってみたが、
すでに割れた大地は固く閉じられてこじ開けることなど出来ない状態だった。
そして、四人の戦士達はじっと残された星獣剣を見つめるリョウマに次々と自らの星獣剣を
重ねてこれからの宿命に誓いを立てるのであった。
そして、たった一人、この光景を離れたところから見ている者がいた。
氷の精、である。
彼女は左手でぎゅっと白銀の鴛鴦斧を握り締め、炎の戦士の兄を死に追いやった原因を作ってしまった
自らの運命を呪っていた。