「今のうちに逃げるんだ」
「さ、こっちへ！」
「はい！」
リョウマと共に駆けつけたハヤテは戦闘の構えを取りながら、酷く怯えている少女を
に託した。
が少女の肩を抱いて安全な道まで走り去るのをミイラ怪人は
忌々しそうに横目で睨んでいたが、そうはさせるかと六人の男女が
脇をしっかりとガードしている為、手が出せずにいた。
「き、貴様ら、よくも邪魔をしてくれたな！」
「まとめて片付けてやる！！」
完全に頭に来たミイラ怪人は戦闘衣に変化した六人の男女に向けて怒鳴り散らした。
リョウマ達は圧倒的な強さで閃光星獣剣をいっせいに水兵の肩に
叩きつけ、黒騎士ヒュウガは一人ブルライアットを振り上げて親玉に突っ込んでいった。
しかし、剣を叩きつける前にミイラ怪人は伸縮自由な包帯ごと消えてしまい、
彼は逆に体中を包帯でがんじがらめに巻き取られてしまう。
彼は二、三箇所の樹木にぶつかって地面に落下したが、危ういところをサヤが駆けつけてくれ、閃光星獣剣
で鞭のようにしなって攻撃してきた包帯を断ち切った。
さらに木立をぬってやってきたが、氷柱の剣を振り上げてミイラ怪人に切りかかっていったが、
錫杖ではじき返された上、その勢いで近くの幹に叩きつけられてしまった。
「小娘、貴様の命も今日で終わりだ！！」
「死ね！」
大きな錫杖が木の幹に叩きつけられた彼女に迫る。
「、危ない！」
ヒュウガは叩きつけられた痛みも忘れて起き上がり、サヤを追い抜いて
走り出した。
彼女は、ミイラ怪人が振り上げた杖先を何とかかわしたところだった。
ヒュウガは草むらを蹴って、ブルライアットを構え、ミイラ怪人の背後から飛び斬りを食らわした。
そして、近くの樹木を足掛かりにしてそこから「黒の一撃」をお見舞いした。
ここでやっと彼に追いついたサヤが、閃光星獣剣ごとミイラ怪人にぶつかっていくと
ピンクの光の弾丸となって砕け散った。
三人の連携プレーにより、モルグモルグと呼ばれるミイラ怪人は倒された。
「、！大丈夫？」
サヤが落ち葉を蹴散らして彼女の元に駆け寄った。
は氷柱の剣を握り締めたまま、木の幹を背にもたれかかって休んでいた。
「よくやった、お前が引き付けてくれたおかげだ」
黒騎士ヒュウガも彼女を抱き起こし、背中を強打していないか確かめてくれた。
「あいつは倒したの？」
「ああ」
サヤは自分と同じ女性戦士が怪我していないことを知ってほっとしたが、
ヒュウガが彼女に向ける眼差しがとても優しく、どこか違うことに気づき始めていた。
「今日はどうもありがとうございました」
ヒュウガに助けられた女子高生が丁寧にお辞儀していた。
「ヒュウガさん、また怪物に襲われたら今日みたいに私のこと絶対に守ってくださいね」
女子高生の花のような笑顔にヒュウガは照れくさそうに笑い返し、
ちょっとやきもちを焼いたサヤに小突かれていた。
とハヤテはそんな平和な光景に顔を見合わせて微笑していたが。
それからヒュウガは密かに送った花言葉に気づいたサヤを褒めていた。
たちまちサヤは頬を染め、「やっぱりヒュウガは私の信じたままの姿だった・・」
と呟き、「これからも戦士の先輩としてよろしくお願いします！」
と元気よく頭を下げていた。
「、まだ怒ってる？」
夕闇が辺りを染める頃、ヒュウガはコテージのベランダにと並んでたたずんでいた。
「まさか・・でもあの芝居は見事だった。皆騙されちゃって」
は白漆喰を塗ったベランダにもたれかかりながらくすっと笑った。
「私もすっかり騙されて。もう少しで何ていい加減な奴なんだろうって思いかけてた」
「これ、本当はあの娘じゃなくてお前にあげたかったんだ」
ここでヒュウガはどこからともなく一輪のラベンダーの花を取り出して
差し出した。
「え？」
はおそるおそる差し出された花を受け取ったが、ポカンとするばかりだった。
「何かあの店でこの花見た時に、お前にそっくりだなって思ってさ」
「俺、こんなことするのすごく苦手なんだけど・・」
ヒュウガは照れくさそうに鼻の頭をかき、つっかえつっかえながら言った。
「じゃ、渡したからな。あ〜・・何か急に腹が空いてきたな・・」
ヒュウガはすごく恥ずかしいのか、そそくさと彼女の側をすり抜けると
コテージの中へ入ってしまった。
馥郁と香るラベンダーの花に顔を近づけながらは、彼は
どんな意図でこの花を贈ったのかなと一人考えていた。
ちなみにラベンダーの花言葉は「待っています」とか「期待」。
ヒロインが一話でメンバーに贈った
スノードロップの花言葉は「まさかの時の友」です。