「悪いな二人とも。買出し大変だったろ?」

ハヤテとが買い物袋を沢山抱えて帰ってくると、干草の運搬車を運んでいたヒュウガが

にこやかに出迎えてくれた。

「いや、勇太も手伝ってくれたし。楽だったよ」

ハヤテは白い囲いの向こうでヒカルにからかわれている少年

に目をやって言った。

「ゴウタウラスはどう?」

はヒュウガに歩み寄って声をかけた。

「おかげさまでよくなってる」

ヒュウガは穏やかな笑顔を浮かべて言った。

「それ、手伝おうか?」

「ああ」

とヒュウガの会話に割って入るようにハヤテは申し出た。

それから数時間後、ピカッ、ゴロゴロという音がして雷雲が立ち込めた。

すると乗馬クラブの立て看板を運んでいたハヤテに異変が生じた。

「何これ?」

は空を仰いで気味の悪い雷雲があることと彼の手が石化したことに

驚愕していた。

「もしかして・・さっきの占い師・・」

ハヤテははっとして、駆け出した。

だが、時すでに遅く、市街地の地下に潜っていた占いの館はもぬけのからだった。

「誰もいない!」

サヤが焦って叫んだ。

「そんな・・確かにここにいたよ!」

勇太はの白い服の袖を引っ張って言い張った。

そんな折、モークから皆の腕輪に連絡が入った。

「うっ!」

「ハヤテ、どうしたの!?」

「勇太!」

、ゴウキは急いで駆け出そうとしてすっ転んだ二人に歩み寄った。

何と二人の片足までも石化現象が進んでいた。

「嘘〜・・石化が進んでる・・」

サヤが目を丸くして言った。

「これは早く手を打たないと!」

ハヤテの側にしゃがみこんでいたが切羽詰った声で呟いた。

「先に行っててくれ、俺はこんなんだし足手まといになる」

「無理すんな・・俺達だけで片付けとくって」

苦悶の表情を浮かべつつも冷静さを失わないハヤテをヒカルは労った。

「行こうぜ」

「二人はこんな状態だから私が側にいるわ」

「何かあったらまずいでしょう?」

「ああ、頼む」

「行こうぜ」

の鶴の一声にヒュウガは力強く頷き、ヒカルは他の皆を促した。

「ゆっくりね・・」

「大丈夫か?」

「うん、これぐらいで怖がってられないよ・・」

に手を引かれながら勇太は苦労して階段を上っていた。

「そうだな。本格的に石化が始まるのはおそらくこれからだ」

ハヤテは冷静に現在の状態を推察して言った。

「だけど、何でこうなったの?」

はここで今まで感じていた疑問を投げかけた。

「実は・・お前がヒカルのドーナツを買いにいっている間に長いこと戻って来なかっただろ?

 その間に俺達、つい、あの妙な占いの館に入ったんだ」

「それで・・こんなことに」

「すまん、俺の責任だ」

ハヤテはに申し訳なさそうに頭を下げた。

「このぶんだと石化するのにあと一時間ぐらいか・・」

がその事実にショックを受けた時、彼らの足元に閃光が走り、爆発した。

「シェリンダ・・」

は軽く吹っ飛ばされたが、すぐにはね起き、乳白色の巻貝をあしらったボディスーツに緋のマントを羽織った

女海賊の姿を見止めて苦々しげに呟いた。

「ギンガグリーン、貴様のとどめは私が刺す!」

勇太を後ろ手に庇うハヤテを鋭く睨みつけ、宣戦布告したシェリンダだった。

「ハヤテ、勇太を連れて逃げて!この女は私がやる!」

は彼に素早く耳打ちすると、「精霊転生!」と氷柱の剣を前に突き出して武装した。

すぐに銀糸を刺繍した漆黒のマントと、普段着の下にレースの軽い防着が彼女の全身を覆った。

・・貴様、どこまでも邪魔する気だな!」

たちまち面白くないといわんばかりにシェリンダの怒りが爆発した。

「こうなったら一切容赦はしない!!邪魔な貴様を切り刻むまでだ。行くぞ!!」

「銀河の森の村人を殺した罪。今日こそお前の命で償って貰う、覚悟!!」

互いに憎しみ合う二人は荒々しく声を上げて突っ込んでいった。

の体目掛けてシェリンダの剣が斬りこんで来た。

は氷柱の剣ではっしと受け止め、ぐいぐい押していく。

「はっ!」

「やっ!」

二人は何度もぶつかり合い、その度に互いの剣から激しい火花が散った。

が急所を狙って素早く氷柱の剣を繰り出しても、シェリンダの力強い

剣で防がれ、弾き返されてしまう。

女海賊の攻撃もさることながら、防御も完璧で、が何度氷柱の剣を振り回しても

思うような位置に叩きつけることが出来ない。

なかなか決着がつかない二人は、ぜいぜい肩で息を切らしながら立ち上がった。

。しつこい精霊め、絶対に貴様を後悔させてやる!!」

「シェリンダ、その台詞、お前にそっくり返す!!」

二人は睨みあい、罵りあい、また剣を振り上げて向かっていった。

シェリンダの剣が何度も叩きつけられ、次第にの氷柱の剣は刃こぼれしていった。

こうした剣戟の間にも蹴りや肩のつかみ合いなどが入り、二人の女の戦いはヒートアップしてきていた。

は不利な体勢から飛び上がり、氷柱の剣を右斜めから彼女の肩に叩きつけようとした。

シェリンダはその隙を逃さず、緑の鞭を繰り出した。

緑の鞭が足に巻きついたはそのまま空中へ浮かされ、高く持ち上げられた後、

ポーンと景気よく吹っ飛ばされた。

「ああっ・・」

彼女はプラスチックテーブルの上に叩きつけられ、その反動でテーブルはガラガラと崩れ落ちた。

、やめろ!!」

ハヤテは自由にならない足を必死に動かしながら悲痛な叫びを上げた。

「何が私に償いをさせるだと?笑わせるな」

シェリンダは剣の切っ先を彼女の喉元に突きつけて叫んだ。

「私に逆らうとこうだ。まずはこの剣のようにな!!」

シェリンダは残酷な笑みを浮かべると、彼女が握っていた氷柱の剣を何度も踏みつけ、

シルバーのロングブーツの鋭いつま先で真っ二つになるまで砕いた。

怒り狂ったハヤテと勇太は体ごとぶつかっていくと、シェリンダを吹っ飛ばした。

「こしゃくな真似を・・目障りだ!!」

吹っ飛ばされたシェリンダはそのままくるくる空中で回ったが、すぐに地面に着地すると

攻撃してきた。

ハヤテは勇太と仰向けに倒れていたを庇って被弾した。

「ハヤテ!!」

苦しそうなうめき声を上げて倒れた彼に、は這っていって近寄った。

「俺は大丈夫だ。残された時間はまだある」

彼は腹を押さえて立ち上がりながら、彼女とそれに付き添う男の子を励ますかのように言った。

「ハヤテ、危ない!!」

が前方から殺意に満ちた表情で走ってきたシェリンダに悲鳴を上げた。

彼は次の瞬間、彼女に首根っこをつかまれ、投げ飛ばされた上、腹や肩に膝蹴りや

肘打ちを食らってしまった。

「うわあっ・・」

ハヤテは横っ面を張り飛ばされ、近くのプラスチックテーブルに激突した。

「死ね!!」

すかさずシェリンダの剣がせまる。

ハヤテはいちかばちか石化した右手で剣を受け止め、弾き飛ばした。

剣は空高く舞い、カンカラカーンと地面に落下した。

「あいつの剣を・・今のうちに」

はその瞬間を逃さず、彼女に付き添っていた勇太に小声で囁いた。

「貴様・・封印を逆手に取るとは!」

後ろ足を引いて戦闘の構えを取ったハヤテに、シェリンダの耐え難い怒りが爆発する。

落下した女海賊の剣に最も近い位置にいた勇太は、重い足をひきずりながら

剣を拾い上げるとハヤテ目掛けて投げつけた。

彼はそれを高くジャンプしてキャッチし、女海賊に叩きつけるが、

彼女に剣先をつかまれて投げ飛ばされてしまう。

「余計な手出しをするな!!」

怒りが収まらないシェリンダは子供目掛けて閃光を浴びせた。

「危ない!!」

が横に飛んで勇太を庇い、二人の上を高層ビルの瓦礫が雨あられと振ってきた。

、勇太〜!!」

ハヤテの顔がひきつった。

それを見た女海賊が嘲り笑った。

「お前だけは許さん!!」

ハヤテは怒りに満ちた顔で剣を握り締め、シェリンダの放つ閃光も

なんのそのすごい勢いで突っ込んでいった。

そしてそのままぶんと剣を振り上げると、力いっぱい、彼女の左胸目掛けて振り下ろした。

女海賊は苦しそうなうめき声一つ上げると、緋のマントをはためかせ、

ばったりと倒れた。

ハヤテは「やった・・」と一言短く呟くと疲れ切って意識を失った。

それからどれぐらいの時が流れただろう。

リョウマ達が悪戦苦闘してガーラガーラの呪いを解いてくれたおかげで、

ハヤテの両手両足は自由を取り戻していた。

?」

、勇太!!」

ハヤテは跳ね起きると血相を変えて駆け出した。

辺りは高層ビルの瓦礫が散乱し、ハヤテは必死に重い瓦礫を片っ端から退けていた。

「どこだ?二人共!!」

彼が蒼白な顔で瓦礫の半分ほどを退けた時、勇太の靴との真っ二つに折れた剣の

片割れが見つかった。

、勇太・・」

ハヤテはおそるおそる靴と剣の片割れを拾い集めると

手に取った。

いつもは冷静沈着な彼もこの時ばかりは二人が死んだと思いこみ、かすれた声で嘆いた。

「嘘だろ・・」

彼の肩は振るえ、目はしみた。

その時、弱弱しいアイスブルーの光が瓦礫の中から上がり、周囲の瓦礫を凍らせて蹴散らした。

さん、しっかり・・」

額からだらだら血を流した彼女を支えた勇太が瓦礫をかきわけ、かきわけ、出てきたのだ。

ハヤテは信じられない面持ちで振り返った。

「勇太・・」

!」

ハヤテはふらつく足取りで近づいていくと、大きく腕を広げ、彼女を強く抱きしめた。

彼は嗚咽をもらし、顔をくしゃくしゃにしていた。

「ハヤテ・・勝手に死んだなんて思ってたでしょう?」

は自分にしがみついて泣く、彼の豊かな髪をかき抱きながら優しく言った。

「よかった・・本当によかった・・お前が無事で」

ハヤテはむせび泣いていた。泣こうとするまいとしてもしばらく涙がとめどなく流れ続けた。

















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