突如、星獣剣をしょって走る三人の男達目掛けてインディアン風の飾り羽が飛んできて
爆発した。
派手に被弾したハヤテは、吹っ飛んで高層ビルのバルコニーから転落した。
何とか片手で手すりを掴んでぶら下がり、すぐさまリョウマとゴウキが
彼を引き上げようとするが、何者かに首根っこを掴まれて投げ飛ばされてしまう。
起き上がった二人は、バリ島風の派手な仮面をつけた魔人の姿に驚愕した。
「こいつも蘇ったのか!?」
ゴウキの悲壮な叫びを楽しむかのように魔人は、再び飾り羽を投げつけてきた。
それから魔人はまだ片手で手すりにぶら下がっていたハヤテを
落としにかかろうとした。
ワンガワンガの体重の乗った足が、容赦なくハヤテの右手を踏みにじる。
たちまち踏みつけられた右手は血だらけになり、彼は苦悶の表情を浮かべていた。
「氷の慟哭!」
その時、間一髪で走りこんできたのアースが魔人の背中を直撃した。
背中からしゅうしゅう冷たい煙を上げたワンガワンガは悲鳴を上げて蹲った。
「お、おのれ・・また、小娘お前か・・」
背中に凍傷を負った魔人は苦々しげに呟いた。
「ハヤテ!」
そのまま駆けてきたはうんうんうずくまる魔人を蹴っ飛ばし、大急ぎでハヤテの
両腕を掴んで引き上げてやった。
「・・お前・・」
無事引き上げられたハヤテはおっかなびっくり、目をしばたいた。
「ごめんなさい、私・・今日は本当にどうかしてた・・」
は彼にちらと視線を投げかけると、申し訳なさそうに謝った。
(彼のことで頭がいっぱいで・・)
「だらしないわね、小娘一人に背後を取られるとは」
交錯する二人の視線。しかし、それを嘲るかのように高層ビルのバルコニーからがたいのよさそうな蛇女が歩いてきて
ため息をついた。
「こんなのだから、ふらふら踊ってばかりいるあんたに任せておくのはどうかと思ったのよ!」
メルダメルダはぎろりと目を光らせると、声を荒げ、目掛けて一匹の毒蛇を繰り出してきた。
「小娘、たっぷりと苦しむがいい!」
メルダメルダの高らかな笑い声が響いた。
いきなりすばしっこい毒蛇に巻きつかれて喘ぐ、血相を変えたハヤテが助けに行こうとしたが
蹴飛ばされて転がっていたワンガワンガに両足を掴まれて引きずられた。
「!」
「ハヤテ!」
たちまち窮地に陥った二人にリョウマとゴウキは色を失った。
「行け!ここは俺が何とかする!」
「早く!」
ハヤテはワンガワンガの足をなぎ払い、体勢を立て直そうとしていた。
「でも!」
ゴウキは毒蛇に締め上げられてもだえ苦しむ彼女を見やって躊躇した。
「リョウマ、ヒュウガの言うとおりにして!」
苦しむ仲間を見捨てていけない優しいゴウキを見かねて、は声を張り上げた。
「ゴウキ、行くぞ!」
リョウマは考えあぐねていたが、後ろ髪を引かれる思いで、未だ決めかねているゴウキを引っつかんで
叱咤した。
しばらくしてゴウキは涙を呑んで駆け出した。非情な決断を下したリョウマの後を追って。
ハヤテの腹にワンガワンガの体重の乗ったパンチが入った。
彼はううっと息をつまらせ、がっくりとくず折れた。
一方、も毒蛇にぎりぎりと締め上げられて、どさりとタイル張りの床に投げ出されていた。
「フン、精霊だけあって、生身の人間よりは頑丈なようだね!」
メルダメルダはがっちりとした腕を伸ばすと、タイル張りの床に投げ出されたの
黒髪をわしづかみにして持ち上げた。
「だが、私達の邪魔をするとどうなるかたっぷりと教えてやる!」
メルダメルダは髪の毛をつかんでいた腕をぱっと放すと、反対の腕を引き、彼女の横っ面を思いっきり張り飛ばした。
は強烈な痛みに悲鳴を上げて、タイル張りの床をごろごろと転がった。
「!」
またしてもワンガワンガに押さえられて動けないハヤテは、むなしく叫んだ。
その後、蘇った強敵に悪戦苦闘していた二人だったが、一人最後まで勝ち残ったリョウマが元凶である三角形のモニュメント
を破壊してくれたおかげで、イリエスの幻術から逃れることが出来た。
ハヤテ、はげほげほむせ返りながら、這うようにして互いの倒れている側まで行った。