朝もやの立ち込める針葉樹の森では、ルーシー・ぺペンシーがアスランを探して

歩き回っていた。

だが、目の先に見えるのは斧を手に歩き回るおっかないミノタウロスの姿だけだった。

妹の跡をこっそりとつけていたピーター・ぺペンシーは、彼女を藪の中に

押しやり、静かにしているように言い含めると長剣を抜いて

昔の敵へと忍び寄っていった。

そこへ朝の見張りに出かけていたカスピアン王子が横から乱入し、ピーターに切りかかった。

ピーターは何とか向かってきた長剣を受け止め、跳ね返したが、カスピアンはさすが王子と

言うだけあって、城で剣の腕もみっちり磨いていたためなかなか強かった。

ピーターは長剣を持った方の手で王子の頬を殴りつけ、上から長剣を叩きつけようとした。

しかし、王子の方が背丈も高く、力も強い為、ピーターがどんなに剣を振り回しても

巧みに避けられてしまう。

ピーターは頬を高揚させ、遂に王子の長剣を優れた剣さばきで翻弄して叩き落した。

そして、大きく長剣を振り回して王子を切りつけようとするが、王子は樹の幹を

利用して上体を低くして何度も向かってくる剣を避け、相手の剣が誤って幹にぐさりと突き刺さった瞬間に

彼のわき腹を狩猟用のブーツで蹴飛ばした。

ピーターは痛そうなうめき声を上げ、カスピアンはこの隙に彼の長剣を引き抜こうとやっきになっていた。

怒ったピーターは起き上がりざまに落ちていた大きな石を振り上げて、カスピアンの頭を叩き割ろうとする。

「やめて!駄目よ!」

小さな悲鳴が上がったのはその時だった。

ルーシーが隠れていた茂みから躍り出て、金切り声を上げて阻止したのだ。

カスピアンは人間の幼子の悲しそうな顔を見て、ぴたりと剣を引き抜く手を止めた。

ピーターは憤怒に鼻腔を膨らませていたが、次の瞬間、彼の表情はショックでさらに凍りついた。


「私の森で騒ぎを起こすとは何事です!?」

振り返った彼の視線の先には、狩の女神よろしく黄金色に輝く弓に矢を番え、佇むの姿。

その後ろには武器を手にしたナルニアの住人達が、王子を守ろうと駆けつけていた。

?」

ピーターはカスピアンから背を背け、信じられない面持ちでかつて恋した妖精女王に呼びかけた。

「あなたは誰なの?」

だが、彼の予想に反して帰ってきた言葉は酷く冷たいものだった。

七世は彼の言葉を聞いても、疑惑を深めるだけで、黄金色の弓矢を下ろそうとはしなかったからだ。

「お前は誰だ?何故、妖精女王の名を知っている?」

カスピアンは奪い取ったピーターの長剣を彼の喉元に当て、脅すように言った。

「ピーター!何があったの?」

この騒ぎを切り裂くような頼もしい声が響いた。

衣擦れの音をさせながら走ってきたスーザン・ぺペンシー、それに続くようにエドマンド・ぺペンシー、テルマール人に捕らわれていたトランプキンが

やってきたのである。

「まさか、偉大なる王ピーター?」

「そうだ。君に呼ばれてやってきた」

伝説の王の名にカスピアンはおっかなびっくり、慌てて手元のアスランの形をした柄の剣を見つめた。

「信じられない。君は、その・・もっと年配の王かと思っていた・・」

「なら数年後にまた出直すとするか」

カスピアンの発言にピーターは機嫌を損ね、くるりと背を向けようとした。

「いや、すまない。いいんだ。ただちょっと・・君達王や女王が想像していたのと違ったものだから・・」

カスピアンはむくれている先王の手を引くと、謝った。

そして、エドマンドやルーシー、トランプキンの顔を順々に眺めていたが、

スーザンの元へ視線を止めると、ちょっと頬を緩めた。

ハンサムな黒髪の王子の会釈におおいに気をよくしたスーザンも、はにかむように微笑んでいたが。

「君達もだ。確か白い魔女の部下だったんじゃ・・」

エドマンドは、斧を携えているミノタウロスにおそるおそるたずねていた。

アナグマが「新たな敵を倒すため、昔の敵と手を組もう」と穏やかに申し出たので

納得したが。

「陛下。お帰りをお待ちしておりました」

「私の心と剣を捧げます」

軽々とピーターの足元にやってきた小さな影は恭しく膝を折ってお辞儀をした。

「すっごく可愛いネズミさん・・」

ルーシーはわくわくして小声でスーザンに耳打ちした。

「誰が言った?」

その言葉に誇り高きネズミの騎士は、ベルトからレイピアーを引き抜いて怒った。

「ごめんなさい」

たちまちルーシーはしゅんとしてしまった。

「ああ!その・・女王陛下でしたか。その、大変失礼でございますが、勇敢、気高い、雄雄しいこそナルニアの騎士の言葉でございまして・・」

リーピーチープは相手が小さな主君と分かってさもありなん。慌てて腰を低くして非礼を詫びた。


「先ほどはとんだご無礼を。私は七世、この森を治めています」

「てっきりテルマール人の斥候のものかと思って弓を向けてしまいました」

薔薇色のモスリンドレスに、黄金色の弓矢を下ろしてやってきた森の貴婦人は

宮廷式のお辞儀をしてピーターを迎えた。


「七世?」

ピーターは初代とそっくりな容姿をした彼女の言葉にいぶかしんで尋ねた。

「おそらくピーター王とともに戦った赤い魔女は、私の先祖一世でしょう」

「じゃあ彼女は・・」

ピーターや側で聞き耳を立てていたエドマンドの顔が曇った。

「すでに亡くなりました。私はその子孫の七世に当たります」










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