ヒースの上を吹き抜ける爽やかな風が真紅の軍用テントや

黄色い旗をはためかせている朝、アスランとに連れられて

少々疲れ気味のエドマンドがピーター達のテントにやってきた。


「エドマンドは充分に後悔している。もう過ぎたことだ。話す必要はなかろう」


アスランはそれだけ言うと「おいで」と促し、

を引き連れてこの場を立ち去った。


エドマンドは何と申し開きをしていいのかわからず、

「ただいま・・」

とただ一言だけ、うつむきがちに呟いた。

姉妹たちはそんな彼をぐっと抱きしめ、反目中の兄も何も言わずに

受け入れてくれた。


ヒースの絨毯で覆われた見晴らしのよい射的場で二人の女の子達は片目を軽くつぶって、

弓を引いた。


矢は嬉しそうに飛んでスーザンのは的の黒い部分の左側、のは

見事、赤い部分の中心に突き刺さった。



ルーシーは感嘆の声をあげ、は「初めてにしては上出来。なかなか筋がいいと思うわ」

と満足げに的を見つめるスーザンをほめた。


「こつは心の眼を開いて・・そうすれば眼を閉じていても的の中心が・・射抜ける!」


はルーシーがこの場の空気に浮かされて懐剣を投げて

的の中心である赤い部分に命中させたのを「とても上手だわ」

とほめてから、再び矢筒に手をやり、弓に矢をつがえ、今度は両目をしっかりと

閉じて弓を引いた。


その言葉どおり、矢はぐんぐん飛んでザシュッと的の中心部分に突き刺さった。




「こら、エド!剣先を下ろすな。教わっただろ?」


「よし、いつでもかかって来い!」



その三人の背後をユニコーンと鹿毛の馬に乗ったピーターとエドマンドが


剣先を交えながら通過していった。



「参ったか!」


「まだまだ!」


金属音がぶつかりあう小気味のよい音がし、長年の反目が解けたピーターとエドマンドは

気持ちの良い汗を流していた。




束の間の安らぎを得たのもどこへやら、弓や剣で汗を流す達のもとに


ビーバー氏が息せき切って駆け込んできた。



なんとあの白い魔女が来るというのだ。




がやがやとざわめく陣営でジェィディス女王は高慢な態度で現れた。


長く引いている白絹のドレスの喪裾をヒースの上にどさりとおろし、しずしずと進んでいく


女王に皆、恐れと憎しみを抱きながらも見守った。



女王はまず、ピーター王の隣に寄り添うを忌々しそうに睨みつけ、


「その様子ではもうナル二アの王妃気取りか?小さき妖精よ」


とあざけって通り過ぎた。


そして女王の眼はエドマンドを威圧的に見下ろし、

「この者は裏切り者だ。アスランよ。分かっているだろうな?ナル二アの石杖となる掟を忘れたとは言わせんぞ」

と高飛車に告げた。


アスランは怒ったように短く吼えると、「忘れるものか。あの魔法は目の前で記されたのだからな」

と反駁した。


「裏切り者の命は私が貰う」


白い魔女がエドマンドを一瞥すると、ピーターが怒って長剣を抜いた。


「姉さん、やめて!この人には何の罪もないわ!」

は細い肩を怒らせて、ピーターと白い魔女の間に割って入り、

真っ向から立ち向かった。


「お前になど聞いていない。それともお前がこの者の代わりに命を今度こそ差し出すか?」


白い魔女はせせら笑うと、自分より背丈の低いこの腹違いの妹を見つめた。


「もし掟を破れば、アスランも知ってのとおり、ナル二アは滅びる!」


白い魔女は怯える兵士たちに向かって高らかに宣言した。


エドマンドは自らの犯した罪の重さに極度に怯えており、唇が震えていた。


はそんな彼を「大丈夫。あの人の思い通りには絶対にさせないから」

と優しく抱きしめて囁いてやった。




「我々だけで話そう」


アスランはエドマンドを抱きしめる、くやしそうに唇をかみしめる


ピーターを見て決意を固めたようだった。


白い魔女を緋のテントに招き、中に閉じこもってしまった。



「ごめんなさい。僕のせいで・・」


アスランを待つ間、エドマンドはなんともいえぬ顔で自分を庇ってくれた、兄妹達に

頭を下げていた。


「あなたのせいじゃない・・自分を責めないで・・きっと大丈夫だから。」


の優しげなスミレ色の瞳に射すくめられると、エドマンドは

なんとなく居心地が悪くなってしまうのだった。



白い魔女が緋のテントから出てきて、意気揚々と去ったのには何か重大な

密約が取り交わされたらしいとにはぴんときた。



「姉が言ったアダムの息子の命は奪われない。お前の約束は確かだろうな?って何のことですか?

 いったい、何を約束なさったのですか?」




緋のテントで、はこれ以上ない難しい顔をしたアスランに伺いをたてた。




「お前はそんなことで頭を悩ませてはいけないよ。さあ、もう休みなさい。小さき妖精よ」


アスランは黙って首を振り、の額に優しくキスするとどこかへ行ってしまった。




美しい朝焼けが東の空を染める頃、ぺペンシー四兄妹とはドリュアドから

悲報を受け取っていた。



昨夜遅く、石舞台の上でアスランが白い魔女に殺されたというのだ。



アスランに可愛がられたの悲しみは計り知れず、「いくら姉の仕業でも許せない。絶対に許せない」


と嘆いた。



「本当に死んだんだ・・」


「もうピーターが指揮をとるしかないよ」


落胆するピーターに言葉かけたのはエドマンドだった。

「ピーター、兵士達は戦いの用意をすすめてる。君の命令を待っているんだ」

「無理だ。僕は軍隊なんか動かしたことがない!」

弱気になるピーターにさらにエドマンドは言葉を続けた。

「アスランは君を信じていた」

「僕も兄さんの腕を信じている」

「私も。これで姉と戦う覚悟が出来たわ。この戦いで全てにけりをつけるつもり」


エドマンドやの強い決意に突き動かされて、ピーターの心は決まった。


「魔女の軍勢が近くまで迫っております。ピーター王。我々に何なりとご命令をお下し下さい」


オレイアスは遠くで不穏な動きを察知したらしく、厳かに言った。


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