その夜、不可解な事件は起こった。

時刻は午後十一時を回ったところだ。

、鶴姫は女性用テントで、サスケ、サイゾウ、ジライヤ、セイカイ達は

男性用テントでぐっすりと眠りについていた。

テント内にぶらさげてあるランタンの明かりが危なっかしげにゆらめいた時、

どこからともなく大きな一つ目玉が現れた。

深い眠りに落ちていた、鶴姫はその異様な大目玉の気配すら感じ取れなかった。

女性用テント内に現れた大目玉は鶴姫をじっと見下ろすと、彼女目掛けて

青白い光線を発した。

鶴姫はその光線に誘われるようにぱちりと目を開け、テントの裾を持ち上げて

こっそりと外へ出た。

「鶴姫? Where are you going?」

鶴姫が男性用テントの側を通り過ぎた時、偶然、ジライヤが男性用テントから

起きだしてきた。

「鶴姫!!」

彼は眠い目をこすりながら、何かに取り付かれたかのように茂みの向こうに

消えていく彼女に呼びかけた。

彼の頭の中で警鐘が鳴り響いた。

「Hey,Wake up! Wake up! セイカイ!鶴姫!」

「Wake up! サイゾウ!Wake up!鶴姫!」

「サスケ、Wake up!」

「わあっ!?何だよ・・日本語の勉強なら明日にしてくれよ、なあ?」

彼は男性用テントの幕を乱暴に跳ね除け、セイカイ、サイゾウ、サスケを

順々に起こして回った。

だが、サイゾウ、セイカイは強く揺さぶってもぴくりとも動かない上、

サスケは反射的に飛び起きたが、またふらりと寝床に倒れこむ始末だった。


、Wake up! Wake up! 鶴姫 is gone!」

ジライヤはこうなればやむをえないと意を決して、女性用テントに飛び込んだ。

「う〜ん・・What's happened?・・キャーッ!!」

草色の寝袋に包まって夢の世界をさ迷っていたは突如、力強い手で揺さぶられるのを

感じて目を覚ました。

「どうした!?」

の絶叫にさすがの男性陣も気づいた。

そして、「妖怪か!?」とどやどやと女性用テントに駆け込もうとした。

「キャーッ!!馬鹿〜っ!!」

だが、びっくり仰天したに平手打ちを食らわされた上、身の回りの荷物をぶつけられたジライヤが

転がり出てきたので皆、彼にぶつかってもんどりうって転んだ。


「あ、妖怪だ!」

年頃の女性の寝室にずかずかと入り込むとは何事だとかんかんに怒って、テントから這い出てきた

だったが、異様な気配に気づいて叫んだ。

そのすっとぼけた声にずっこけそうになった男性陣だったが、「壁登場!」との

声にはっとして後ろを振り返った。

「ドロドロ、行けぇ〜!」

異様な気配の正体は分厚いレンガ塀の妖怪、塗壁で最下級妖怪を手始めに繰り出してきた。

こうなると達の眠気は完全に吹っ飛んだ。

彼らは印籠で戦闘衣に早代わりし、早速最下級妖怪と取っ組み合いを始めた。

の機嫌はすこぶる悪かった。

その為、最下級妖怪で戦闘員であるドロドロに普段の数倍も八つ当たりしてやっつける始末だった。

だが、彼らが突然の夜襲に必死で戦っているのをあざ笑うかのように、

木立に囲まれた公園の出口に白塗りの高級車が止まり、鶴姫を連れ去ってしまったのである。



昨日の夜襲騒ぎもどこへやら、鶴姫は妖怪に何かされるわけでもなく無事に帰ってきた。

鶴姫は昨晩、不思議な二頭立て馬車に導かれ、ダチョウの羽飾りのついた黒の帽子にスマートなペールブルーの絹服を着た

王子に舞踏会に連れて行かれたこと、別れ際、彼が名残惜しそうに高価そうなピンクダイヤのブレスレットを贈ったこと

などを話した。

「王子様の夢を見たって?」

「それで一晩中、熱々で踊ってたっていうの?」

セイカイ、サイゾウにはこれが腹を抱えるほどおかしかったらしい。

「そんなに笑わないでよ。私だってそういう夢ぐらい見ることあるわよ・・」

酷く笑われた鶴姫は傷ついたようなとまどった表情で呟いた。

「あのねえ、一言言わせて頂きますど、私達は今、そういう年頃なの。

 あなた達が可愛い女の子を追いかけるように、私達もそういうカッコいい人を求めるの。ちょっとは分かってよ・・」

はムッとして、鶴姫を庇うように彼女の肩を抱き、

まだ笑いをこらえている女心の分からない男性達に向かってぴしゃりと言い放った。

「こいつは塗壁一人の仕業じゃねえな」

「夢の中で人間を自在に操る共犯者がいるに違いねえ」

サスケは高価そうなピンクダイヤのブレスレットをつまみあげて

冷静に言った。

その横には昨晩、に受けた平手打ちの後がわずかに残っているジライヤがいた。

「Oh!Oh,No!」

ジライヤはサスケから手渡された宝石をしげしげと眺めていたが、突発的に叫んで、猫丸へと走っていった。

「Look,Look!」

彼が戻ってきた時には腕に英字新聞を抱えていた。

「あれ、この宝石・・」

セイカイがぽつりと呟いた。

「盗まれた宝石、オイモでダマサレタ」

「何!?そいつはまずいよ!このままじゃ俺達、これの窃盗犯にされちゃうじゃない!」

ジライヤの指差した記事にはとある高級宝石店のピンクダイヤの首飾り、ブレスレット、指輪の

三点が騙されて盗み取られたとかかれてあった。

早速、セイカイ、サイゾウは鶴姫が夢の王子から貰った宝石の出所に気づいて

こりゃ大変だと騒ぎ出した。

「じゃ、鶴姫の理想の王子様はただの窃盗犯だったってこと・・」

「それで盗み出した宝石を夜な夜な一個ずつ、鶴姫にあげてたってことなのね?」

「そんな・・」

の言葉に、鶴姫は驚愕して英字新聞の上に無造作に置かれた宝石を眺めた。




 

 






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