無事に塗り壁と目目連を倒し、今回の妖怪花嫁騒動も一応決着がついた。
「I Love My Princess」
「え、これ私に?」
ひざまずいて、赤やオレンジのバラや白、ピンクのマーガレットが詰め合わされた
花束を差し出しているのはジライヤだ。
集合住宅が立ち並ぶ公園の入り口にとめた猫丸の側で、お互いに突っつきあったりして
鶴姫の驚く反応を楽しんでいるのはサスケ、サイゾウ、セイカイの三人の悪がきだ。
は「もう〜それぐらいにしてあげたら?」と苦笑いして悪がき三人を
軽くいさめたが、三人はそんなことなど頭に入らず、ますます調子に
乗って鶴姫をからかうことに熱中した。
「あ〜!」
「もう〜あんた達、許さないから!」
猫丸のバスの前でにやにやしていた男三人と、ジライヤにようやく
気づいた鶴姫は怒って花束をひったくると悪がき四人を追い回し始めた。
「ジライヤ、待ちなさいっ!」
「うぉ、危ない、危ない〜!」
「ちょっと、待ちなさいってば!」
鶴姫はかんかんになって綺麗な花束を振り回し、男共の頭をぶったたこうとしたが、
彼らは笑いながら鶴姫の攻撃を交わし、すたこらさっさと逃げてしまった。
「もう、馬鹿っ!知らないっ!」
鶴姫はやけくそになってまだ握り締めていた花束を放り投げた。
彼女はそのままぷりぷり怒って猫丸の運転席に戻り、一人残されたは
苦笑いしながら猫バスから離れたところに投げ捨てられていた花束を拾った。
「理想の王子様か・・」
「それにしてもとんでもないシンデレラ詐欺だったわよね・・」
彼女は鶴姫を助ける為に使ったダチョウの羽飾りのついた帽子を
どこからともなく取り出すと、その中に綺麗な花束を入れて呟いた。
が、花束に残るまだみずみずしいマーガレットやバラの香りを楽しんでいると、それがとっくに
逃げ延びて木立の陰に隠れて様子を伺っていた男達四人の悪戯心を刺激したらしい。
彼らはひそひそと素早く互いに耳打ちし、にやりと笑った。
「愚かな詐欺師ども、醜悪なる裁きは終わりだ!」
「そこにいる男は王子を語る不埒な偽者。本物の王子はこの私で妃となるを貰い受けに来た!」
サイゾウが人のよさそうな笑みを浮かべて、ほいほいに近づいたかと思うと
彼女の腕からダチョウの羽飾りのついた帽子を取り上げてかぶり、どこかおどけた感じで言った。
「うわ、やられた!」
「参りました、参りました!」
「waaah!!」
180センチもある長身のサイゾウがの王子衣装の真似をして、長剣で詐欺師達を
切り捨てる真似をやってみせると、セイカイ、ジライヤ、サスケの三人は上手くばたばたと道路に転がって倒れる真似をした。
「あ〜っ、全部サスケが仕組んだのね!」
一人、立ち上がり、腕を組んでにやにやしている彼にはぴんときて叫んだ。
「もう〜っ、そんな恥ずかしい台詞覚えないでよ〜!!」
彼女は持っていた花束を振り上げて、余裕綽々で突っ立ている男を叩きながら抗議した。
「だってよく出来てるんだよ!これ!」
ハハハハッと爽やかに笑いながら、サスケはそろそろと後ずさりしていた。
「全く、何て人達なの!」
「あんな格好、二度とやらないからね!!すごく恥ずかしかったんだから!!」
は耳まで真っ赤になって、「早く来ないと置いて行くぞ〜!」と茶化す四人の
男達目掛けて怒鳴った。