どれだけ走ったか分からない。
今、少年を連れたサスケとは近くの図書館に逃げ込んでいた。
「サスケ、お〜いサスケ〜!返事しろよ〜!」
「Hey,,,キコエテマスカ〜?」
所変わって、印籠をかしゃかしゃ上下に振りながら、いくら待っても帰ってこない
二人に呼びかけるのはサイゾウとジライヤだ。
「おかしいな・・二人とも弁当買いに行ったまま戻らないんで
印籠で連絡してんだけんど全然通じないのよ」
「え、何ですって?」
午前中のお客も帰り、そろそろ猫丸でのんきにお昼休みを取ろうとしていたメンバーは
鶴姫の声色が変わったことに一気に顔を強張らせた。
「くそっ!どうなってんだよ、いったい・・」
「坊や、誰かに狙われるような覚えはないのか?」
サスケは図書館の鉄柵の隅にしゃがみこむと、少年の肩をがしっとつかんで尋ねた。
「そんなのあるわけないよ!!」
少年は困ったように首を振るばかりだ。
「鶴姫!」
「サイゾウ!」
「お願い、誰でもいいから出て〜!!」
サスケやの必死の呼びかけにも印籠からの返事は全くない。
「無駄な努力はやめることね!サスケ、!!」
気取った高笑いが周囲にこだました。
「お前はくの一組!!」
サスケがくやしそうに吼えた。
映画館のワイドスクリーンのように上空にサクラのスライドが映し出された。
彼女は「お前たちの印籠通信は妨害されている。それを持っている限りどこへ逃げようと追跡可能よ」
と声高らかに宣言し、「嘘だと思うなら印籠を捨ててみることね」と挑発した。
「いったいどういうつもりだ?なぜ無関係なこの子まで巻き込む?」
サスケは怒りに身をたぎらせ、ぎらぎらとサクラを睨みつけながら叫んだ。
「その子はたまたまついてきたおまけよ。本当の狙いはお前達二人の命!!」
「何!?」
「ふざけるんじゃないわよ!!」
二人がサクラの真の狙いに吼えた時、彼女は哀れみを含んだ目で
少年に「そこにいる二人はね、正義の味方だなんてうそぶいてるけど、本当は
とんでもない男女の疫病神なの。その二人にくっついている限りどんどん不幸になるわよ!」
と追い討ちをかけた。
「サスケ、、飛んだ置き土産を持たされたわね!」
「ちょっとでも気を抜こうなら、お前達だけじゃない。その子も死ぬわ!!」
「馬鹿な、何の関係もないこの子をたぶらかすなど!!」
「サクラ、よくもこんなことを!!どこまで汚い真似をする気なの!?」
二人が猛り狂っている間に、彼女は再び高笑いしながら消えてしまい、
見えない恐怖を感じた少年は悲鳴を上げて二人から逃げてしまった。
少年は実家のパン屋にほうほうのていで駆け込んだが、既に母親は
くノ一組の手に落ちており、隣の薬局に勤めている女性もくノ一組が
変装した偽者だった。
びっくり仰天した少年の首に手をかけ、締め上げようとしたランに
やっと追いついたサスケは飛び蹴りを食らわした。
ランは一瞬怯んだが、パン屋のおかみさんに化けていたユリが背後から
忍刀をかまえてせまった。
サスケは双方向から走ってきた二人に忍刀で切りつけられたが、その場に
ターコイズブルーのTシャツとデニムの短パンだけ残して消え去った。
ランとユリがどこへ消えたか目をこらしていると、暗緑色の忍び装束
に衣替えしたが手招きしている方向にサスケと少年が走っていくのが見えた。
舗装されたアスファルトの上を三人が走っていると、前方から長い黒髪を垂らした
四人の女性がマウンテンバイクをこいでやってきた。
サスケとがぎょっとして向きを変えようとした時、今度は
背後から二人組みの女性がマウンテンバイクで退路を塞いだ。
六人の女性はマウンテンバイクの前輪を高く掲げ、三人に体当たりを
かまそうとしてきた。
サスケとはとっさの機転で姿勢を低くすると、その反動で
高くジャンプして、前輪がぶつかりあって身動きのとれぬマウンテンバイクから逃れた。